異郷の地の尊敬する人。こんな素敵な先生に出会えた幸せに感謝

私には尊敬する女性の先生がいる。以下、T先生とする。
T先生は日本人ではなく、マルタでの短期留学で出会ったイギリス出身の方だ。その先生の授業を受けられたのは七日間、時間に換算すると二十一時間にしか満たない。
しかし、私はT先生のような素敵な方にもう出会うことはないかもしれないと思うくらいに先生を尊敬している。
T先生は挨拶を笑顔で目を見てしてくれた。二日目にお手洗いで会った時も、私は日本人お得意の目を伏せるという術を使い、誰が個室から出て来たか見ないようにしていたのに、Good morningと声をかけてくれた。正直驚いた。
先生は多くの生徒と交流があり、廊下ですれ違った生徒としばらく話している姿を何度も見た。また、教室に入って来た時にも挨拶をしてくれるので、四日目くらいからは先生が教室に入って来た時に私も挨拶をするようになった。先生は自分のことをMorning personだと言っていたが、きっとそれだけではなく、礼儀がきちんとされており、人と話すのが好きだからだと思う。
五日目の授業の後教室を出るときにSee youと声をかけることができなかったことを後悔し、明日は絶対言おうと決めた。六日目は教室を出るときにきちんと挨拶できて大好きな笑顔で返してもらえて本当に嬉しい気持ちになった。
最後の日には私の声が通らず、一回では聞こえなかったようだったのでもう一度言ったところ、返事が聞こえた。その時すでにドアを出てしまっていたので、顔は見えなかったが、きっと笑顔でこちらを向いていたと思う。もう会えなくなるのが嫌でGoodbyeではなく、See youと言った。また再会できることを願った。
T先生は本当に優しかった。英語がどんどんbrokenになっていっても最後まで聞いてくれるし、助け舟を出してくれる。
私はBankとMoneyという単元で、自分の経験不足が露呈した。中国人と韓国人と三人で話し合いをした際、他の二人は自分がぼったくりをされた経験や外国為替での経験を話していたが、私はそもそも経験がない上に二人のアクセントを聞き取るのが難しく、殆ど発言できなかった。そのあと他の人がどのようなことを言っていたのか全員に伝える時間があり、聞き取れもせず、発言もできなかった自分は終わったと思っていた。案の定私が話せなかったことは伝わったみたいだが、それ以上言及しないでいてくれた。
また、黒板の前に立って問題の正誤を確認する時間があり、何度か当てられた。その際にキーボードが固まってしまったことがあったが、先生はHold onとわざわざ笑顔で目を見て言ってくださったり、終わりそうだったがクラスメイトから質問が相次ぎ席に戻るタイミングに迷っていたら笑顔でペンを返してというジェスチャーをしてくれたり、最後にgood girlと声をかけてくれたりした。
Good girlやgood, good girlは私が先生によくかけてもらった言葉の一つだ。いいね!というようなちょっとした助言の一つなのだろうが、それをすてきな笑顔でかけてもらえる瞬間が大好きだった。
T先生は真面目でメリハリのある方だ。最後の授業でDebateをしていた所、火災報知器が鳴り、その瞬間先生はleave your bags and go out.とすぐに切り替えていた。また、階段の近くで立ち止まり、生徒を誘導していた。
しかし、その顔は笑顔で生徒を不安にさせないようにしているようだった。階段を下りた後は皆揃っているか確認した後、煙の臭いなどがしないことに安心した皆は写真を撮り始め、先生も笑顔で映っていた。
一緒にいた期間は短く、T先生は私の名前や顔を忘れてしまっているかもしれない。写真はあるが、私は実際の先生の動作や表情を忘れかけている。それが悔しくも悲しくもある。
しかし、私はT先生のことが今でも大好きだ。もっと教えてもらいたかった。もっと先生のことを知ったり、お話ししたりしたかった。先生と別れるのは寂しくて帰りの飛行機では泣いてしまったし、今も泣いている。
初めての留学ということもあり不安だったこともあったが、異郷の地でこんなにも素敵な方に出会えて私は幸せ者だ。生きていればきっとまた会えると思うし、またマルタに留学したいとも思っている。先生の出身であるイギリスにも行ってみたい。この出会いに本当に感謝している。
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