低すぎる私の声は「上司に向いている」大器晩成型なのかもしれない

私は声がすこぶる低い。
マッチングアプリで初めて通話した相手から指摘を受けたこともあるほどだ。
ずっとコンプレックスだった。低くても素敵な声の人はたくさんいるだろうが、私はそうではない。ガヤガヤとした居酒屋などでは、全然通らない。女の低い声というのは、他の音があるなかだと埋もれてしまう。ついでにこもってもいるので、利便性から考えても結構最悪だ。
別に、アイドルや声優のようにかわいい声じゃなくたっていい。普通の女の子たちみたいな声になりたい、とずっと思ってきた。
しかし声というのは変えようと思って変えられるものではない。アルバイトでの接客中や、電話での応対中は作った高い声を出すことはできる。というか、意識せずともそれ用の声が出るようになった。しかし友人と話しているときなど、気を抜いていると元の声に戻ってしまう。本来と違う声で四六時中話し続けるというのは、強い意志がないと出来ないのだと思う。
しかし最近、この声の利点に気がついた。
私が所属している部署には、女性の上司が数名いる。彼女たちが指示や指導をしている様子を見ていて、あることに気がついた。女性の低い声は、上司から出てくると「落ち着いている」という印象につながるのだ。
こちら側がミスをしてしまったり、時間がなかったりという状況でも、低い声の女性上司からの指示だと冷静に受け止められる。
もちろん、それは実際には声だけの問題ではないのだろう。上司自身がこちらに圧をかけないよう、トーンや言葉選びに気をつけてくれているのだとも思う。ただ、低い声であることによってそれらの気遣いが最大限の効果を発揮しているように感じた。
私は今の会社に新卒で入社し、今年で4年目になる。多少後輩の仕事について口出しする場面はあるが、本格的に新人教育の担当になったことはまだ無い。もしかしたら来年から担当することになるんじゃないか、とは周囲から何度か言われている。
人に何かを教えることに対しては、全く自信が持てない。上司の様子を伺いつつ新人に指示するというのは、想像しただけで難しい。締切時間が明確にあり、それが毎日訪れる仕事内容なので、指導中新人さんよりも焦ってしまうんじゃないかという気さえする。
しかし、私は声が低い。この事実だけは覆りようがない。つまり、新人さんに圧をかけてしまうリスクは少ないのではないかと思う。
ずっとコンプレックスだった自分の声のおかげで、教育に関する不安が少しだけ解消できた。もしかしたら、私のこの声は上司に向いている大器晩成型なのかもしれない(仮にそうだったところで、性格と能力が向いているかは怪しいところだが)。
来年以降の担当にかかわらず、今後勤続年数が重なっていけば、指導や監督をする場面は増えてくるだろう。圧以外にも気にしなくてはならない点は数多くあるだろうが、とりあえずちょっとだけ前を向けた。
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