子供の時、多くの人が通った道だと思いますが、私は“友達の前にいる自分”と“家族の前にいる自分”では、キャラが全く違う典型的な猫かぶり系女子でした。一生に一度も猫を被らない人なんて、いないと思います。

しかし、私は被ったキャラがあまりにも素の状態とかけ離れていた為、今から考えると少々イタイ子だったと思います。むしろ、よくそこまで頑張ったなと自分を褒めてあげたいくらいです。私がそこまで猫かぶりをした原因は、ある作品の主人公でした。

困難に立ち向かいながら、自分らしく成長していくムーランに憧れた

ディズニーアニメの『ムーラン』という作品をご存じでしょうか。この作品は、ムーランという女性が自分に正直に生きることを選び、自分らしく困難に立ち向かいながらも成長していく物語です。

私は、この作品が子供の頃から大好きで、レンタルビデオ屋で何度も借りて観ていました。一応ムーランは、ディズニープリンセスらしいのですが、私は他のプリンセスにはあまり興味がありませんでした。

なぜなら、彼女は王子様すらも助けてしまうくらい勇敢で、賢く強かったのです。私は、そんなかっこいい女性になりたくて仕方ありませんでした。その憧れが強すぎたのか、子供の時から無意識に「強くてかっこいい女になる!」と思うようになっていったのです。

思春期の始まり頃、小学5年生の私は急激に太りました。小学4年生まではスリムで、目も大きかった私は、頻繁に男の子から告白されていました。しかし、小学5年生からはパッタリとなくなり、むしろ太っていることが原因でいじめられる始末でした。

女らしくないのなら、せめて男らしくかっこよくと思った私は、色んな努力を始めたのです。一人称を“俺”にし、いじめられても清ましているようにしました。

友達からはクールな人と思われていたけど「本当の私」は全く違った…

中学の時には、男性声優の声真似をして声が低くなるように特訓しました。友達の間でポケモンが流行っていても「流行りものに興味はない」と、流行にはあえてのらないフリをしていました。そのような行動があってか、友達からは何故か「兄」と呼ばれるようになっていました。いつしか友達の間で、私のキャラクターは“たくましいクールな性格の人”になっていたのです。

「やったー!自分の目指していた方向になったー!」と、本来であれば喜びたいところですが、実際の私はまったくの別人。かっこよさに拘るあまり、ただ自分好みにキャラをカスタマイズして作っていただけだったのです。そのようなことをすればもちろん、本当の意味での友達はいなかったと思います。

実際の私は、楽観的なひょうきん者。かっこいいものより、可愛いキャラや柄が大好き。おまけに流行歌は、絶対チェック。家族とTVを観ている時、CM音楽が流れると急にリズムに乗り出し、声真似して歌い出すような子でした。キッチンでは、毎日踊りながら母にその日あったことを話していました。ひょうきん者というより、“明るいバカ”の方が合っているかもしれません。ポケモンだって、流行りだから興味がなかったわけじゃありません。興味がなかったのは本当ですが、私はポケモンよりプリキュアやセーラームーンなど、徹底して女子向けアニメが好きだっただけです。

そうです。私の“本当は褒めてもらいたい自分の可愛いところ”は… “クールなフリしちゃうけど本当はバカ明るい&バカ一生懸命なところ”なのです!

「ん?バカ一生懸命って?」と思われたかもしれませんが、よく考えてみてください。かっこよく見せたくて低い声を出す特訓をして、中学生頃には本当に低くなるまで頑張ったのですよ。

しかし、よく考えてみたら高校に入り「よし!青春するぞ!」といざ意気込んでも、低い声の太ってる女子などモテるはずもなく…。私の高校生活は、ただただ真面目に部活とバイトに没頭して終わりました。

自分の道は、自分で見つけて幸せになる為の「努力」をすること

現在は23歳になり、2019年に大学を卒業後、すぐに就職しました。就職した…のですが、配属先の上司をすぐ好きになってしまい、上司もその気持ちに応えてくれたこともあり、付き合ってからすぐに結婚、妊娠、出産とトントン拍子。人生における大事なイベントを1年にすべて詰め込んでしまいました。我ながら、相変わらず行き当たりばったりのバカ全開だと思います。

しかし、今の私は不思議と後悔はしていません。おそらく、少々考えなしに行動していたことは否めませんが、バカなりに自分の道を自分で選んで決めたと胸を張って言えるからだと思います。今更ながら『ムーラン』で学ぶべきことは、強い女になることではなく、自分の道は自分で見つけて幸せになる為の努力をすることだと気づきました。

娘は生後6カ月で、まだまだ手がかかりっぱなりですが、私がリビングで娘に笑いかけながら踊り出すと、娘も最高の笑顔で、手足をバタバタと動かします。いつの日か娘が「お母さんかっこいい!」言ってくれるように。そして私も「でしょー!」と笑えるように。一生懸命、かっこ悪く、自分の道を生きさせてもらいます!