「こんなこと言ったらセクハラって言われるかもしれないけど」って枕詞が大嫌い
昔、子どもながらに覚えたなんとなくの違和感は正しくて、大人になった今の生きづらさも大抵がその違和感に繋がってくる。
漠然と自由に自分らしく生きたいと考えていたティーンの頃、「ありのままに生きる」を自分のテーマにしていた。
田舎では風変わりなお嬢さんだったし、海外経験をして戻ってきた日本は、都会でも快適ではなかった。きっと日本から出る経験がなくても生きづらさはあったけど、そうじゃないパターンを知ったからこそ、なんとなくだった違和感を、明確とした感覚のズレとして認識するようになって、私のズレじゃなくて、社会の問題と捉えるようになったのかもしれない。
その中でもなんとか過ごす内に、周りに残った人は似た価値観を、似た違和感を持った人だった。
生きづらさを感じる社会にいても、仲間内での居心地の良さは構築できている。
それでも、ちょっと外に出れば違う。他人の視線や言葉が気になる場面は数えるとキリがないし、男に生まれていればと思ったことが何度あるかはわからない。
人には人の地獄があるし、他方になることが解決策ではない。
それでも、能力として性に縛られないけど慣習的に性で割り当てられる役割や区分がまだまだ多く、女性を公衆の場でも性的に消費する“文化“が強く、それを枷に感じる時は少なくない。
女の子なんだから、料理はできるようにと、男の兄弟・従兄弟が遊ぶのを横目に、幼い頃から料理を手伝わされて親戚の集まりを過ごし、女の子のイメージに則り、ピンクのものを買い与えられ、スカートを履かされて、楽器を習い、バレエを習い、茶道を習い、着物の着付けも習い、“女の子らしく“と育てられ
進路を考える時には、女の子なんだから地元の大学をとしきりに勧められ、外国語系への進学が決まると、嫁入り修行にはピッタリねと言われ、就職してから25歳が見えた頃には、「女の子はクリスマスケーキ。25歳までが売り時で、26歳以降は価値が下がった売れ残り」なんて話をされたり。
地元に残る友人は次々に結婚して子どもをもうけて、異なる歩みをする私に「都会の人になったね」「すごいね」と一歩距離をとった言葉をかける。
求人情報を見ても、知り合いの働き方を見ても、日本の田舎は、女性が自力で生きていくことを基本的に想定していない。
地元は、親族は、年齢を重ねるほどに適度な距離が必要な存在になった。哀しくも。
田舎比だとマシな東京も、マシなだけで、生きやすくはなくて。単純に暑いから布面積が小さめの涼しい格好をして、動きやすいから体にフィットする服を着ても、街中では変に視線が集まる。
何かあった時にはそんな格好をしているのが悪い、なんてことすら言う社会が現実で、ブルカやアバヤを身につけて手足しか出ない格好をすれば良いのでしょうか?
そうではないはずなのに、加害者にならないための教育ではなく、被害者にならないための教育がベースの今の世の中には、時々嫌気がさす。
仕事関係でも、「女の子だから」と呼ばれる飲み会があったり、どうせなら可愛い子と仕事がしたい、綺麗な人は表に立たせた方が良いな風潮があったり、正直、それで瞬発的な得をすることも確かにある。でもそんな得は求めていないし、それは長い目で見ると損である場合が多い。
冗談を軽くかわす術がどんどん上達しても、そんなスキルを本当は学びたくもなかったし、周囲のそんな発言を角が立ちすぎない程度に軽く皮肉って指摘しても、軽くしか扱われなくて。
「こんなこと言ったらセクハラって言われるかもしれないけど」って枕詞が大嫌い。
分かっているなら言うなよだし、それをつけたら“許される“とされている環境も嫌い。
「昔は良い時代だった」という声も、誰かの犠牲に基づいていたことを理解してほしいし、その恩恵の代わりにどんな役割を担っていて、今なぜそれが許されなくなっているのかを学ぶべきだろう。
他人の意識を変えるのは、社会を変えるのは一筋縄では行かないないし、自分を曲げる方が楽なのは事実だけど、私は私の違和感を大切にしたいし、大好きな日本だからこそ、みんなが互いを思いやって生きやすい社会になってほしいと思う。
私個人の力が及ぶ範囲は大したことがなくても、同じような意識を持つ人が同じように自分の周囲に影響を与えていくことができたら社会はきっと、徐々に変わっていく。そう信じているからこそ、私は自分の思いや考えを発信したい。議論がしたい。自分の世代では大きく変えられなかったとしても、次世代の過ごす社会がより良くなっていたらいいなと、私は思う。

かがみよかがみは「私は変わらない、社会を変える」をコンセプトにしたエッセイ投稿メディアです。
「私」が持つ違和感を持ち寄り、社会を変えるムーブメントをつくっていくことが目標です。
恋愛やキャリアなど個人的な経験と、Metooやジェンダーなどの社会的関心が混ざり合ったエッセイやコラム、インタビューを配信しています。