「バニラ味のチーズが好き」
「分かる」

君との初めての会話だ。大学の新入生ゼミで隣だった君に、恋をした。分かると言われただけで、私の全部が受け入れられた気持ちになった。

君は自己紹介の時、「小さい頃の夢は、忍者になることだった」と言った。その言葉が頭を離れず、ある日、私は買い物中に見つけた忍者柄のノートとポケットティッシュをつい買ってしまった。そしてラッピングしてもらい、君にプレゼントした。プレゼントを受け取った君は、「なんでくれるの?」と聞いた。当時の私は「あげたいからあげる」と答えた。そして笑った君を見るや否や、その場から走り去った。プレゼントを開けた君がどんな顔をするのか見たかったけれども、恥ずかしいのと怖いのとで君から逃げた。

大学祭では、君に宛てたラブソングをステージで歌った。しかし、その頃くらいから、君はLINEで私に既読スルーをするようになった。君に嫌われたと思った。

やがて、君との接点である新入生ゼミが終わり、大学で会わない日々が約一年続いた。

好きだという気持ちを少しごまかして書いた

ある日、大学への道を歩いていると、角を曲がるバイクが目に入った。君だった。信号で止まった君はこちらを見た。私は、何か言った方がいいかな、と思った。何を言おうか迷った。やがて信号は変わり、バイクは走り去った。せっかく久しぶりに会えたのに、挨拶さえできなかった。君に何も言わなかったことを後悔した私は、メールを書いた。

件名は、「Pour un garçon qui aime noir」黒を愛するある少年へ、という意味をフランス語で書いた。ある時、君がフランス文学が大好きだと知ったので、フランス語で興味を惹こうとした。また、見かけるといつも全身黒のファッションだったので、黒を愛する、と君を形容した。本文には、LINEを送ってほしいと書いた。当時は、どんな形であっても君とつながりたいと思っていた。君とはなかなか大学で会わなかったので、つながる形にSNSを選んだ。そして最後の追伸には、こう書いた。

「君のことを憎からず思う」

好きだという気持ちを「憎からず思う」という言葉に置き換えて少しごまかして書いた。送信ボタンを押す。

何日も日々は過ぎた。しかし君からはSNSもメールも来なかった。今思うとそれが当たり前である。一方的に書きたいことだけ書いて送って、君の気持ちを考えていなかった。メールを見て、君は嫌な気持ちになったかもしれない。または当惑したかもしれない。しかし送ってしまったメールを無かったことにはできなかった。

君に告白して前に進みたい

それから約二年が過ぎ、今の私がいる。未だに君のことが忘れられない。しかし、君を好きかどうかが分からない。もしかすると私は今、君に恋することに恋しているのかもしれない。そんな風にふわふわした状態の自分が嫌だった。前に進みたい。

次会うときは、君に口で「好きだ」と言う。

そうすることによって、私は次の恋に進める。君への恋は諦めている。しかし諦めきれてない。引きずったまま。それが嫌だ。だから告白して前に進む。私は君に告白するための準備を始めた。それがダイエットである。できる限りきれいな自分で、君に「好きだ」と伝えてこの恋を終わりたい。

きっとまた会えると信じて、一歩踏み出す

私は朝バナナダイエットを始めた。現在五か月目に入っている。その五か月の間、私はダンスやランニングも試みた。しかし、体重が重かったので、足を痛めてしまい、やめた。今も続いているのはウォーキングと腹筋だけである。しかしその結果、私は10kg痩せた。目標体重まであと15kgというところである。

君にまた会えるか分からないけれども、きっとまた会えると信じている。その日のために、今日も私は一歩踏み出す。