特集:次会うときは

「またね」。その言葉は、きっとまた会えると信じて交わす約束

次会うときは

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次があるって幸せなことだ。
「バイバイ」や「さようなら」じゃなくて
「またね。」って。
また会えるよね。ってことだ。
また会えることがどれだけ幸せなことなんだろう。

大好きだった祖父は、会えないままこの世を去った。残ったのは後悔だけ

私の祖父、祖母は札幌に住んでいた。
幼い頃は私自身、札幌に住んでいた為、週末になると泊まりに行ったり、夏には庭でバーベキューに花火、冬は雪でかまくらづくり。
たくさんの思い出を一緒に作った。

私が小学3年生になると父親の転勤で、神奈川へ引っ越すことになった。
毎週の「またね」が、半年に一回に変わり、
部活を始めた頃には行くことさえ厳しくなった。
ただ電話が繋がっている分、会っていない気にはならなかった。

そんな中、祖父が入院したという情報が耳に入った。ただ前にも「癌」で治療をし、回復していた為、
今回も大丈夫、そう信じて待ち続けた。

しかし、今回は治らなかった。

大好きな祖父が亡くなってしまった。

入院中、私だけが部活を理由に行けなかった。
元気な顔も見られず、あんなに可愛がってくれた祖父は、会うときにはもう目を閉じていた。
私はひどく後悔をした。

祖父、そして祖母との別れ。大事なものは失ってから気付くと知った

その3年後に祖母も癌になった。

祖父の後悔から私は何もかも捨てて、駆けつけて行った。
帰るときには「またね」「また来るからね」と痩せ細った祖母の身体を触れ、この手に何かの力が宿ればいいのにとさえ思いながらその場を後にした。

また、少し経った後、家族と一緒に訪れると祖母の身体はさらに細くなっていた。
抱きしめた身体は近いのになぜだか
遠い存在になっていく気がした。
そしていつものように「またね」と言うと
祖母はにこりと微笑んだ。

しかし数日経った後、亡くなったと聞いた。
最後に家族の顔を見れて安心していくことができたんじゃないか。と周りの人はそう言ってくれた。
祖母は何度か会うことができた分、悲しみも大きいけれど、祖父の時のように会えないでお別れしてしまった方がよっぽど悲しいと分かった私は、ただこの気持ちを受け止めることしかできなかった。

神奈川へ引っ越してからは「札幌に行くの楽しみ~」だなんて言っていたけれど、本当に楽しみだったのは札幌という場所に行くことではなく、
祖父と祖母に会えることだったんだ。
失ってから大事なものに気がつくことがあるなんてよく言うけれど、私は祖母の身体に触れていた時からその大事さに気がついていた。
けれど、やっぱり失ってから気がつくものって
沢山ある。
「ありがとう」や「また来るからね」という言葉をかけることしかできなかったあの日さえも幸せで大事な時間だった。

2人はもういない、そう実感した時、祖父と祖母の優しくて温かい声が、ニコニコとした笑顔が頭から離れず、ボロボロと悲しい涙に変わる。
今はもう思い返すことしかできないけれど
思い返すことが、祖父と祖母と心で繋がれる瞬間だと、そう思っている。

「またね」の約束が叶うことは幸せなこと。だから、今を大切にしたい

今、あなたの周りにいる大事な人
「またね」で本当に会えるかだなんて分からない。
伝えられる言葉があるとするならば
その時に伝えてほしいと心から思う。
後悔しないようにではなく
また会えることは奇跡みたいなものだから。

人は、これが最後の桜だと思って見ると、
なぜか重貴な桜のように思えて
会えることが最後となると
大事に時間を使おうとする。
いつが最後か分かっていれば
変わるのだろうか。
でも最後の日が分かっている世界であれば
それはそれで時間にとらわれて、
大事なものが見えない気がする。
だからこのいつ終わりを告げるか
分からない世界で、今を大事に生きていきたい。
生きて欲しい。

そして大切な人に次会うときには
「またね」と言える幸せを噛みしめたい。

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