私はアメリカで学生をしている。5月中旬に春学期が終わって、夏休みが始まったときだ。新型コロナウィルスの影響もあり、ほぼ家にいる。夏の授業もオンラインなので、意識しないと外に出ない。健康とリフレッシュのため、たまに外に出るようにしている。

3日連続で食べたポテチの罪悪感をスープで埋めたかった

私は、近くのウォールグリーンに気分転換に行った。日本でいうドラッグストアだ。お菓子コーナーを見ているとお菓子がセールになっていた。ポテトチップスが半額で売られていたのだ。私はポテトチップスが大好きなのだ。これは「買うしかない」という頭のセンサーが反応して手を伸ばした。また「ポテチといったらコーラだ!」と、コーラ500mlを2本買って帰る途中は、なんとワクワクしたことか。そういうときの帰路はとても長く感じた。

いざ家に着くと、ネットフリックスを観ながら、面白いくらいの勢いで、飲んで食べた。なんて幸せなのだろう。私は、アメリカンサイズのポテチを贅沢に独り占めして食べる幸せを覚えてしまい、3日間ポテチを食べる生活をした。3日目には、アボカドを切って潰して、ディップする方法を思いついたほどだ。しかし、3日間食べ続けた私を襲いかかったのは罪悪感だった。

たまにはジャンクフードもいいのだけれど、健康のためにもそろそろちゃんとした食生活に戻そうと思った私は、YouTubeで女優さんが野菜たっぷりかつ脂肪を燃焼できるとうたっているスープを作っているのを観て、私もやろうと決めたのだ。

往復約2時間かけて買い出しに行き、スープを作った

次の日私は、パプリカ、玉ねぎ、ズッキーニ、キャベツ、トマト缶を買いに、片道50分、往復約2時間かけて徒歩で大型スーパーに行った。そいう時に限って、めちゃくちゃ暑かった。

帰り着いて、食材を切り煮込んで作ってみたが、どうも美味しくなかった。とてもこの「脂肪燃焼スープ」を楽しんで飲めるとは思えなかった。せっかく労力をかけて作ったのに…なので、そのスープの水分を飛ばして、そこから味付けされているトマトペースを使って、ラタトゥイユ風にアレンジした。そのまま食べるのも飽きてきたので、パンに塗って、チーズをかけてピザ風トースト。パスタに絡めてトマトパスタ。これはヘルシーなのか、もはや分からない。なぜかそのラタトゥイユが入っているタッパーが冷蔵庫にあるのを目にするたびにテンションが下がってしまう。腐る前に早く消費をしないと。

私は、なぜこんな気持ちになるのかと考えた。多分、私が目指していた「脂肪燃焼スープ」が作れなかったからだ。「もし成功していたら、ちょっとはスッキリしているはずなのに…」「鼻に少し汗をかきながら飲んでいたはずなのに」 と思った。

理想と現実のギャップが埋まらなかったことにショックが大きかった。「たかがスープで?」って話なのだけれど。

焦っていた私に美味しくないスープが教えてくれたこと

コロナウィルスが流行してから、私のアメリカ生活の色々な出来事と思いが、このスープを機に発生してしまった。多くの留学生が自国に帰る中、私はアメリカでオンライン授業を受けようと決めた。しかし、強がってしまっている自分がいた。日本にいた方が、食が充実しているし、スーパーやコンビニにも徒歩で行けるし、実家というだけで安心できる。一方、アメリカでは誰にも頼ることもできず、孤独感を感じていた。

でも、私はアメリカにいると決めたのだから、他の自国に帰ってしまった留学生とは違う何かをしなくてはと追い込んでいた。例えば、家はシェアハウスだから「他の人とコミニケーションを取って英語を使わないと!アメリカに残っているのだから、アメリカに残っているのだから……」「この状況だからという言い訳しないで、家で出来ることをしなくては」「資格の勉強をしなきゃ」「ここで何か成長しないと…」といろいろ考えて必死になっていた自分に溢れてきてしまった。

さらに、気持ちと行動が比例していなくて、またそのことイラついて、悲しくなって、布団に顔を埋めたと思ったら、急に鏡で肌荒れをしているニキビを見つめて、悲しくなって。今まで抑えていた感情が溢れ出てしまった。そのあとは、気持ちがスカッとした。

日常で起こった小さなことを人に話したとしても「へえ…」くらいにしかならないし。人は自分のことで忙しいから、なかなか話すことができない。だけど、日常生活の小さいことが溜まると結構手強い。

でもそんなことより、映画を観るにしろ、ご飯を作る、食べる、悲しくなる、笑う、イラッとする。この日々の暮らしを営むということこそが、立派な生活をしていることだ。好きなアイスクリームを今日は食べられた。ヘヘヘッて笑えるくらいがちょうどいいなと。「あんまり思いつめすぎないで」ってこの失敗した「脂肪燃焼スープ」が教えてくれた。