836万円。
これが私が大学を卒業した時点で負っていた負債額だ。
そして今、この負債額は半分以下の390万円になっている。

ということは大学卒業から3年で私は446万円返済したことになる。単純に月換算すると毎月約12万の返済。新卒で月給20万の会社に勤めていること、東京で一人暮らしをしていることを考えたら毎月12万の返済は正直簡単ではない。1人の時は基本自炊し、服は基本セールの時に調達し、本は買わずに図書館を利用し、歩ける距離なら基本歩く。友達といる時はお金を理由に断ったり我慢するのが嫌なので、1人の時はどちらかというとかなり節約している方だと思う。

836万円あったら、どれだけ遊べただろうか。余裕で結婚式が挙げられるし、世界一周旅行にも行けるな・・・と考えたことは何回もある。

アメリカでは一般的でも日本ではあまり会話にのぼらない「学費ローン」

日本ではあまり大きな問題として議論されていないが、アメリカでは卒業後学費のローンに苦しむ人が多いことがよくメディアに掲載されている。そしてお金に困っている、学費を返済しないといけない、という会話は学生の間でも頻繁に交わされる。
私自身も海外大学に進学したいと両親に話した時に授業料を就職後払うという約束し、今の借金額に至る。日本にもきっと学費ローンの返済で大変な人がいるとは思うのだが、あまり注目されていないのは何故だろうか(コロナの影響で、それでも少し注目されていたようには感じるが)。

私はかれこれ日本に戻ってきて3年になるが、周囲に学費ローンを抱えている人にはほとんど会ったことがない。たまたま私が休日によく遊ぶ多くの友人はかなり恵まれた家庭に育っており、私みたいに多額の負債を抱えている友達自体が周りに少ないのか。よほど親しくない限りお金の話をあまりしないという日本の慣習が影響なのか。

もしも、836万円の借金がなかったら。失ったものと得たもの

正直、836万円の借金は私にとってお荷物だ。
海外に放浪の旅に出たい!と思っても踏みとどまるのは、毎月安定した収入が入ってくる今の仕事を手放すことができないから。そもそも毎月借金返済にお金をほとんど当てているので放浪の旅に出るだけの貯金もない。

少し高めのお店で可愛いワンピースを見つけ、欲しい!と思っても考え直すのは、その分を少しでも学費返済に回して、はやく完済を目指したいから。
毎日自炊してえらいねと友人には言われるけど、これだってただその方が外食するよりも節約になるからに尽きる。別に自炊が趣味ではない。
我慢が多い生活に、ついつい自虐に走りそうになるのを必死にとめる。だって、自分が自ら選んだ選択による負債であって、誰のせいでもない。そして自虐ネタにしてしまうのは過去の自分にも失礼だ。

学費返済がお荷物になるとわかっていたなら、日本のもっと学費の安い大学に行けばよかっただけのことなのに、という声も聞こえてきそうだ。でも当時まだ高校生だった私には働いてお金を稼ぐことの大変さを知らず、それまで親が敷いてくれたレールに乗っているだけだった私が人生で初めて自らやりたいと思った大きな決断を実現させるのに必死だった。

お荷物を抱えた代償に得られたのは、お金で買えない価値

そして例え836万が私にとってお荷物だったとしても、私は一度も海外大学に進学したことを後悔したことはない。
今の私の大部分は大学生活で形成されたし、私が昔より自分のことを好きでいられるのも、自己肯定感高めでいられるのも、全てアメリカでの3年間のおかげだ。自己肯定感の高さなんてお金で買うことができないのだから、836万円の価値は十分にあったと思う。
そしてそう思えることはとても幸せなことだと思う。
だって渡米前は本当に836万円分の価値があると思える経験ができる保証なんてなかった。異国でのストレスや勉強のストレスで苦い思い出だけの、「お金と時間の無駄だった!」で終わる可能性もあった。
だから私はたまに文句を言いながらも、学費の返済を続ける。

この学費返済が終わった時に、私はそれまで返済に当てていたお金を何にあてるのだろうか。自己投資なのか、それまで諦めてきた可愛い服なのか、結婚することを想定した時の貯金なのか、それともやっぱり海外旅行なのか。数年後にその答え合わせをするのが楽しみだ。