中学3年生のころ、黒髪のロングヘアの“モテる女”だったわたしは、学年でとにかくモテた。
学級委員や生徒会、部活の部長を務めたので、とにかく人目を引く機会が多かった。
3年生のときには友達づてに聞いただけでも、学年で何人もわたしに好意を持っている男子がいたのだ。
その他にもペアで活動することの多かった委員会の男の子と噂されたり、他校との生徒会の集まりでもこっそりナンパされたりすることもあった。
当時、人から言われるイメージはだいたい決まってこうだった。

「なんでもできて、優等生のモテる女の子」

周りにはそれなりに友達もいて、キラキラしている。
他人から見たわたしは、そんな15歳だった。

黒髪ロング&リーダー的存在だったわたしは、男女ともに人気だった

いつも無意識のうちにきちんとして、にこやかにすることを心掛けるようになっていた。
華やかなイメージのわたしを壊さないようにしていた。
それは自分自身ではなかったのだけれど、学校という狭い世界がすべてだったあのころのわたしは、一度走り出したらもう止めることもできなくなってしまっていたのだ。

中学1年生のときは、ショートヘアでおでこを出していたが、中学3年生のころにはロングヘアに伸びていた。化粧もほとんどしていなかったので、前髪を作って顔を隠して盛っていた。
髪型を変えてから気がついた。
黒髪ロングは間違いなく男ウケがいい。
急にモテるようになった時期は、髪が長くなってきた時期とドンピシャに重なっていたからだ。

それまでのわたしは、リーダー役を数多く経験したことから、女子人気は高かったが男子からの人気はあまりなかった。
髪の毛が伸び、ロングヘアになったことで、

“いい子ちゃんでリーダー的存在で、男女ともに人気の存在”にわたしはなった。

華やかでいい子ちゃんのイメージを変えられないでいた自分

そんな毎日が辛くて、夏になるころに“GREE”に登録した。
“GREE”は、簡単に説明するとSNSとゲームができるサイトだ。
わたしは、学校の世界しか居場所がなく、とにかく逃げ場が欲しかったのだ。
学校が終わると、毎日帰りの電車でログインする生活が始まった。

サイトの中では、顔を出さずにさまざまな人と交流をした。好きな人の恋愛相談をしたり、進路に関する相談もした。
ネットだけで繋がる環境は、自分をがんじがらめにするものが何もなく、自分に貼られたレッテルから解放されているので安心して息ができるような環境だった。

趣味を通じて他のユーザーと交流もした。当時わたしは“椎名林檎”に憧れていたので彼女を好きな人をひたすら探した。
“椎名林檎”はわたしにとって、凛としてショートカットの似合う強くてしなやかな女性。
どう考えてもその当時の自分と真逆だった。
自分らしさも押し殺していれば、周りからのイメージを守るために憧れの髪型をすることもできない。
心のよりどころだった“GREE”に、どっぷりはまっていく時間が増えるほど、そんな思いは強くなる一方で、虚しくなっていく自分がいた。

居心地の悪い自分を解放してあげたら、やっと気持ちが満たされた

結局、中学を卒業するまで髪の毛を切ることはなかった。
自分に染みついてしまったイメージを変える勇気は最後までなかった。

そんな自分を変えたくて、できるだけ遠くの高校を選んだ。
クラスメイトは、市内の高校に進学する人が大半だったため、わたしの高校選びの第一基準は「遠くの市外にある学校」、それだけだった。

可愛くて、つまらない女からの脱却をするために。

全く違う環境に入ると、何のためらいもなく髪の毛を切ることができた。
自然と自分の性格も変わっていった。
苦手な教科や嫌いなものを素直に人にさらけ出せるようになったのだ。
周りの友達も自分にとって本当に心地のいい、無理をしなくていい人たちが集まってくるようになった。
なにより嬉しかったのは、見た目より中身を見てもらえることが多くなったこと。

男ウケはって?
予想通り、中学3年生のころのような勢いはなくなってしまった。
それでも、わたしの気持ちは満たされていた。

自分で「わたし」を解放してあげることができたから。