昨年10月1日より消費税が10%に増税した。と同時にキャッシュレス・ポイント還元の事業がスタートし、6月30日で終わりとなる。「キャッシュレス」という言葉を聞いたことはあっても、この事業がスタートするまで個人的には聞き馴染みがなく、あまり身近にいない存在だった。

ポイント還元は魅力。でもクレジットカードには戻れない。

現金派かクレジットカード派の2つに分類するならば、私は現金派だ。財布の中にお札がいくら入っているか目で見てわかるし、食費とそれ以外に分けていくら使えるか予算を決めた分だけ財布に入れておけば、節約にもなる。実を言うと元々はクレジットカード派だったのだが、世の中の流れに反する形で、私は現金派になった。

理由としては、資金管理が苦手でクレジットカードの支払いがいくらあるか管理ができず、翌月の支払い明細を見てびっくり仰天したり、リボ払いの闇に呑み込まれた経験から、私にクレジットカードは向いていないと判断したのだ。今でもこの判断は間違っていないと思うし、怖い思いをしてからクレジットカードは解約した。

ただ、キャッシュレス・ポイント還元の事業はとても魅力的だった。クレジットカードや電子マネー、LINE PayやPayPayなどで決済すると2%~5%還元されるなんて、節約生活を一応心掛けている身からすると有難い話である。高校時代、友人から「浜ちゃんって、平成顔じゃなく外見も中身も大正デモクラシーやんな」と言われた時代遅れの私でも、この話に乗っからない手はない。

私はデビットカードを導入することにした。デビットカードならばカード決済したと同時に銀行口座から支払いが行われる。予算分を銀行口座へ入金しその資金内で使用するなど、残高の管理もしやすい。支払い方法はクレジットカードと同じ仕組みなので、デビットカードを使い始めた当初はトラウマが蘇り恐々していたが、数ヶ月もすれば慣れたものだ。大正デモクラシーでも令和の波を見事に乗り切れたと言えよう。

変わっていくお金の価値。変化を楽しんでいこう。

だがしかし、魅力的な事業も6月30日に終わってしまう。デビットカードを使い続けるか、完全な現金主義に戻るべきか迷う。どうすべきか考えた際にふと財布の中のお札や小銭を眺めてみた。お札を色んな方向からマジマジと見つめ、手で触る。見つめすぎて危うく野口英世と恋が始まりそうになるところだった。(残念ながらこの時諭吉様はいらっしゃらなかった。)言ってしまえばただの紙切れ一枚、この一枚に1000円の価値があり、2000円、5000円、1万円の価値がある。紙幣を前にしてみると不思議な気持ちになる。たかが紙、されど紙。この紙切れ一枚でコンビニ弁当や商店街の揚げたて熱々コロッケ、雑誌に漫画に上げ出したらキリがないが購入することができる。

しかしながら時代の流れはキャッシュレス、物質としてのお金を持たなくても物品を購入できる時代だ。そうすると、お金の価値とはどこにあるのだろう。紙幣を手にすればその価値を目で見て手で触れて認識することができた。キャッシュレス化が進み、紙幣や小銭そのものがもし世の中から無くなったとしたら、私たちはどうやってお金の価値に触れることができるのだろう。ネットバンキングで電子通帳を見ながらデータとして何にいくら使ったか、データとして確認することでしかないのだろうか。データをいくら眺めてみてもそれはあくまでデータであり、画面上で確認できる数値でしかない。

今こそ高校時代の友人に「令和の波にのってるぜ」アピールできると思っていたが、自信が無くなってきた。まあ、一個人である私がどう思おうが世の中の流れは進むし、時代の移り変わりとともにお金の形も変わっていく。今までだって物々交換だった時代から和同開珎ができ、金貨や銀貨を経て紙幣ができたのだから。若干の不安と怖さは残るものの、お金の歴史を調べてみたら、これから先どのようにお金の形が変わるのか楽しみになってきた。さて、今日もお財布の中にお金があることに感謝しつつ1日を過ごすことにする。