「環境」「エコ」という言葉を聞くと、私個人ができることといえばゴミを減らすことだろうか。なるべくゴミにならないものを選ぶとか、食べ物を無駄にしないとか。

「フードロス」なんて言葉もある。独り暮らしを開始してから、食品の賞味期限や消費期限は“自分の体基準”になっている私だ。スーパーの“おつとめ品”なんて、割り引かれているし、それを中心にした献立を考えればいい、私にはお役立ち品でしかない。

医療現場は「エコ」な視点から見ると無駄が多すぎるのか?

そんなエコを意識しているのかいないのかという生活を送る私だが、多量のゴミに囲まれる瞬間がある。

それは、私の仕事だ。私は看護師をしている。医療の現場は、きっと他の仕事よりゴミが多いと思う。注射器や針、点滴ルート。これらは全てバラバラにプラスチックで個包装されている。酒精綿は1回の採血で少なくとも2枚使う。

入院して点滴を続けるときは針を留置するが、その処置時になかなか血管に留置できないときは、針を刺す前に毎回消毒するのでその度に使う。針も毎回変えなくてはならないので、使い捨てである。

何か処置をする時にもし床にでも落としたら、全て取り替える。特に私が働く部署では、滅菌操作が必要な処置もあるので、清潔にしておかなければいけない物品に、指1本でも触れたら、全て片付けて新たな物品を出す。

血液が付いたものは再利用できず、全て医療廃棄物として処分される。それまで着ていたパジャマやシーツ、全てである。これはきっと、エコな視点から見ると無駄が多すぎる。

医療の現場では「命」を救うために、エコよりも清潔を優先する

しかし、そうしなくてはいけない理由がある。採血前に消毒するのは、人間の皮膚には常在菌という、もともとの菌がいる。また、生活するなかで、いろんな菌が体に付着している。針を刺すことで、それが血管内に入れば感染症を生じる。地面には色んな菌がいるので、同じ理由だ。

滅菌操作をするときは、脊髄に針を刺す処置が多いが、そこに菌が入ると髄膜炎といって、命に関わる病気になる。

医療の現場では、目の前の命を救うために、エコよりも清潔を優先させる。もちろん、分別は徹底されるよう指導を受けているので、包装されているプラスチックや、ラベルといった燃えるゴミは別に捨てている。

私は矛盾を抱えながら、今日も地球と命を救うために働く

もしかしたら、このような対応を全ての仕事で行ってしまうと、エコなんて言葉が忘れられるくらいに、地球に負担をかけてしまうだろう。

その影響で誰かの命を危険に晒したり、未来の人々の生活を奪うのかもしれない。

でも、私たちが少し清潔よりもエコを優先したら?

感染症が蔓延し、世界中が大変な今、そんな恐ろしいことはできない。
私たちはその矛盾を抱えながら、今日も地球と、命を救うために働く。