幼い頃から自分の外見だけはそれなりに好きだった。転校先の小学校では周りの子たちよりも大人っぽかったし、目立つ子がやってきたぞ!と話題になった。
社会人になってからは、少し美人なだけで会社で注目される。新入社員の中で勝手にランキングを付けられ「俺は◯◯ちゃん派!」と話のネタにされる事も多々あった。

ここまでの話だと、なんだよただの自慢じゃない?もっとためになる話をしろよ~と思われそうだけど。
全人類にはわかって欲しい。私のような芸能人にまでなりきれない程度のそこそこの美人は、この世を生きづらいことを。

学生時代も、社会人になってからも、僻みを買うことはたくさんある

女子高生時代、部活動を辞めた友達は「あの子とうまくいかなくなったから辞めます」と私の名前を挙げた。先輩の悪口を言った友達に軽く注意をしたことがきっかけだった。その頃はまだ若かったし、多少きついことを言ったのかもしれない。私は真面目な性格だし、先輩たちのことが大好きだったから悪口を知らないふりすることができなかった。その子は特に目立つタイプでもなく、常に自分に自信がない女の子だった。私のせいにしたところで、あんたなんて大したことないくせに持ち上げられて!僻まれて仕方ないのよ!と腹いせくらいの気持ちだったのだろう。

だけど元々退部する予定だったくせに、その理由を全て私のせいにされたことはさすがにショックだった。部活仲間や顧問の先生の前で、号泣しながら私のせいじゃないことを説明するのは本当につらかった。

そのくせ彼女は大学生になってからも、私のSNSを常にチェック。嫌いなら見なければいいのに。割り切ることにして、彼女のアカウントをブロックした。
また当時付き合っていた彼が目立つタイプだったこともあって、SNSには「お前なんか大したことないくせに彼と付き合いやがって」と書き込みされたこともあった。何が大したことないわけ?「大して美人でもないくせにチヤホヤされやがって」が含まれた内容だとすぐに理解したけど。この学校の中で自分のことをそんな風に思ってる人間がいるんだ...そう思うと一気に恐怖が押し寄せた。無名の誹謗中傷はこんな昔から始まっていた問題なのだ。

社会人になってからも僻みを買うことはたくさんある。お局には嫌味を言われたり、周りの子たちとは明らかに違う冷たい態度をされたり。そんなことは何度も体験してきた。大人になってからは周りとうまくやっていく術を身につけたから、学生の頃よりは生きるのが楽になった。結局自分のことは自分で守っていくしかないのだ。

私の人生で「美人」は呪いのワードになっていた

そして現在、私は無職。昨年末から体調不良が続き、パニック障害気味で会社に行けなくなった為退職。今では電車に乗ったり、人と接すると動悸と吐き気を催すようになった。

そんな不安定な中でとても信頼していた彼とも様々な原因があり、今では全く連絡を取っていない。絶対結婚すると意気込んでいたのに、絶望の果てに追いやられた気分でやりきれない日々を過ごしている。彼だけは私を「美人」で終わらせることなく、本当の姿を見てくれている、そう思っていた。頼れる存在だったのになぁ。私はただのお飾りだったのかな。涙よりも絶望感のほうが遥かに勝っている。

そんな経験をしていく上で、いつの間にか私の人生で「美人」は呪いのワードになっていた。

美人、美人って、私のことを中身で見てくれる人はいないの?

美人だからいいよね、美人だから僻まれちゃうんだよ、美人だからすぐ結婚出来るよ!美人なのにパニック障害なの?かわいそうね。
なんなんだろう、美人って。外面よく見えたって、周りのみんなと同じひとりの人間だよ。私のことを中身で見てくれる人はいないの?

それでも私は私だから、自分を愛せなくなることは一番ダメなことだと思う。
幸いなことに体調を心配してくれる友達、傷ついた時に支えになってくれる友達はたくさんいる。人生の中で唯一自慢できるのは、良い家族と友達がいてくれる事だ。
自分を必要としてくれる人がいる限り、相手のために親身になって向き合ってきたからだと思う。それだけは自信を持って言える。

きっと本当のあなたを見てくれている人がいる

容姿のことで虐められたり、自分を責め、惨めになったりつらい思いをしている世界中の皆さん。わたしもあなたたちと同じです。
レッテルを貼られ、辛い思いを持ち続ける。良かれと思って放たれた美人というワードも、悪く捉えてしまう人間がいるかもしれません。

そしてそこそこ美人の皆さん。自分の「美人」にプレッシャーを掛けるのももう辞めてほしいです。知らぬ間に自分自身で呪いのワードを作り上げてしまっているかもしれない。でもきっと本当のあなたを見てくれている人がいるから。そんな大事な人たちを絶対に手放さないで。その人たちをこれからも大切にしていくことがきっと一番重要なことなんだ。

今はそれがわかったから、呪いのワードに悩まされた日々も無駄じゃないと思える。これからは「美人」を無駄にしない、そんな人生を送っていけたらいいなぁ。