学生時代、金に困ってではなく、暇で暇で仕方なくてバイトを始めた。
今振り返るとその時に私と労働の歴史がはじまったのだなぁと思う。
高校3年生の時に推薦で大学を決め、地図の制作会社のアルバイトをした。一日中外を歩き回るのが寒くて一週間でやめた。その後は花屋で働いて、これも寒くて3ヶ月でやめた。

だから、大学生のときアルバイトは初めてじゃなかった。
大学一年の冬に、また暇疲れしてスーパーのレジを始めた。しばらくすると、なにかがおかしい。と思うようになった。
覚えることがありすぎてうまくいかない。
失敗ばかりする。
正しい判断ができない。
レジの打ち間違い、クレジットの処理の間違い、お金の数え間違い。
先輩によく怒られる。
この中村さんという先輩には、私があまりにも仕事ができないので、最後にはあいさつも無視されるようになった。
ごめんなさい。と思う。

社会人になって4年半、やっぱり続いている「なんかおかしい」

新卒で大手のホテルに就職して4年半経った。

やっぱり「おかしい」と思った。
私は人と比べてなんかおかしい。

人よりずっと仕事ができない。

失敗するたびに、反省する。

次は同じミスを繰り返さない。と思う。

なのに、また確認不足でミスする。

みんなに申し訳ない、と思う。

母にはいつも「仕事いつでもやめていいよ」と言われる。

「それより婚活してお金持ちと結婚してほしい」と言われる。
「30歳の姉より先に結婚しちゃえ」「結婚相談所に行ってみなよ」と言われる。

結婚ラッシュに焦り、はない。私の一番の悩みは仕事ができないこと

26歳になってから、まわりで結婚した話が突然増えた。本当に突然増えた。今年の1月は、初めて結婚式に行った。朝出勤して、職場からそのまま行った。

4年半ほぼずっと、仕事ができないことで悩んでたから、恋愛や結婚が全くリアルに浮かび上がってこない。男性とすれ違うことや、ラインがなかなか来ないことにも悩んだ。でも私にとって本当にリアルな悩みは、同僚みたいにちゃんと普通に仕事ができないこと。不安な気持ちでいっぱいのまま、仕事をしたくない。それが、一番。

友人に相談しても、「結婚して辞めたいよね。」とまとめられる。
分かってる、私はばかだ。
母は、私があなただったら血眼になって相手を探すよ、という。本当にそうなんだろう。
本当に、母の言うとおり、いつの間にか30歳になってしまうんだろう。
早く結婚したほうがいい。でも、なにからやったらいいかわからない。

普通の人になりたい。
結婚したら幸せになれるのだろうか。

なんだか、リアルに浮かび上がってこないのだ。

私のリアルは、毎日の仕事だけだ。

心臓の音だけが鳴り響いて、ボヤける視界。私、もしかして…?

まるで心臓が分裂して体のいたるところに移動してしまったのかなと思うくらい、いつもドキドキしている。

不安なとき、自分が間違ってるかも、怒られるかも、こいつ何してるのって思われるかも、って思うとき、身体がかたまって、冷たくなるのを感じる。
それから私の体中の心臓たちが、一斉に速くなりはじめる。
そこから心臓の音だけが鳴り響いて、世界がちょっとボヤける。1ミリくらいピントがズレる。私は、自分のことを取り戻すことができなくなる。

なかなか眠りにつけないのに、朝は一時間早く起きてしまう。
そこからずっとドキドキしている。

本当に病気だ。こんなに仕事ができないって、頭がおかしい。そう思って病院に行こうか悩んだこともあった。
でも、もし病気と分かったらどうなるんだろう?

Twitterで障害者雇用の男性が月に13万円しかもらえないと嘆いていた。

体力もないし失敗ばかりだしもう仕事やめたいけど、月に決まったお給料が必ず貰える。
ボーナスも出る。

それに、接客だけは楽しい。

それ以外の仕事全部楽しくないけど、接客だけは楽しいと感じる。

これだけは言いたくなかったけど、「こんなはずじゃなかった」

ものすごく苦しいのにそれだけの理由で、やっぱりやめるべきじゃないかも、と思ってしまう。
本当は辞めてしばらく休みたいけど、同時に休むのが怖くなる。

恋愛も仕事もまともにできないけど、社会に関わっていれば、なんか大丈夫な人って自分で思える。

でも、自分がズレて、ずれて、ずれまくってきて、疲れてきた。
こんなはずじゃなかった。
これだけは言いたくなかったのに、でもやっぱり、こんなはずじゃなかった。

取り戻したいと思う。何を。わからない。心臓をひとつにする何かだと思う。