バツイチの彼との結婚を考えていると言ったとき、友達から全力で反対された。

「バツイチって、なんか問題ある人なんじゃないの?」
「まだ若いのにわざわざバツイチを選ぶ必要なんてないじゃん」
「そうだよ、これからもっと良い人いるかもしれないよ」

ううむ、確かに。予想していた反応とおおよそ合致していたので大して驚きはしなかったけれど、そうはっきりと口に出して言われると、やっぱり胸に刺さるものがある。

彼がバツイチだということは、出会った時から承知していたことだった。当時は「別に結婚するわけじゃないし、まぁいっか」くらいの軽い気持ちで受け止めていたのに、それがどうしたことか、いつのまにか結婚する流れになってしまっていた。そういえば彼は、出会った当初に「君といつか一緒になるんだ!」と高らかに宣言したうえ、それは絶対に実現するとなぜか信じ込んでいた。わたしはたぶん、そういう根拠のない自信にまんまと丸め込まれたのだと思う。

わたしはどう頑張ったって彼の最初の妻にはなれない

そうして結婚が現実化したことで、彼のバツイチ問題が急浮上したのだ。

わたしはどう頑張ったって彼の最初の妻にはなれない。一度目の結婚では、きっとたくさんの友人や家族に祝福してもらって、永遠の愛を誓ったんだろう。彼が前妻を愛していたという事実は、わたしを度々傷つけた。いっそのこと、彼に「一緒になりたい」と言われて「ふーん、そうなんだ」と思っていたあの頃に戻りたい。友達が言うように、バツイチなんてやめて初婚の男を探したほうが良いのかもしれない。そうしたら、こんなに苦しい気持ちになることはないのに。人を本気で好きになると、痛みが伴うということを知った。

当たり前だけど、わたしはまだ離婚も結婚もしたことがなくて、彼が今までどんな気持ちを経験してきたのか全然分からない。そもそも、一度失敗しているのに、なぜまた失敗の始まりに手をかけようとしているのか、わたしにはさっぱり理解できなかった。離婚は身内の死別と同じくらいのストレス負荷がかかるとどこかで聞いたことがあるが、もしわたしと上手くいかなくて再び離婚となってしまったら、彼にまた同じ悲しみを背負わせてしまうことになる。何より、それが嫌だった。

お互いを理解するための話し合いや気持ちの整理はとても難しかった。お互い初婚同士だったら生じなかったはずなのに、と彼を責める気持ちになることもあったし、他の人を好きになれたらラクになれるのかもしれないとも思った。けれど結局、彼以外の人を好きになれなかった。

だって好きなんだから、一緒のほうが幸せでしょ

ただ、色々と考えていくうちに、そうやってうじうじ考えてても仕方ないんじゃない?と思い始めた。だって、彼以外の人を好きになるどころか、彼のことはさらに好きになってくだけだし、彼は相変わらず会う度に「役所行こう」と言ってくるし、いつまでも悲劇のヒロインぶってても何にも進まない。彼と一緒になれない理由を考えるよりも、どうしたら彼と一緒になれるかを考えたほうが幸せじゃん、と何だか急にスコンと腑に落ちてしまった。

そこからは自分でも驚くほど開き直って、猛スピードで進み始めた。

まず、彼には結婚の条件として2つ挙げた。1つは、前妻に関するものは全部段ボールに詰めて、赤字で「封印!」と書いてガムテープでぐるぐる巻きにすること。もし、何かの拍子でうっかり前妻の写真なんかが目に入ってしまったら、ネガティブな気持ちになることは間違いない。余計な諍いを避けるためにも、必要なことだと思った。本当に完遂したかどうかまでは確認してないけど、「一緒になれるなら別に捨ててもいい!全部捨てる!」と言っていたのでたぶんそうしたのだと思う。もう1つは、転籍をすること。これは意外と重要で、転籍をすると以前の戸籍謄本のデータが表示されなくなるので、書面上は真っ白な状態になる。前妻との婚姻歴を見たくもないという人にはおすすめだ。ただし、婚姻届を提出する際には前回の離婚日を記入する必要があるので、確認をしてから転籍しよう(うちは、それでちょっと揉めた)。

そして「あなた、いつも役所行こうって言ってたよね?じゃあ今日行こっか」くらいのノリで入籍した。ここまで来ると後には引けなくなって、もう死ぬまで面倒見てやるぜ、みたいな謎の使命感まで出てくるので不思議である。

誰が何と言おうと、わたしたちが幸せならそれで良い

別に周囲が何と言おうと、わたしたちが幸せならそれで良い。わたしが好きになったのは、過去を全部含めた彼。バツイチかどうかということもよりも、2人の問題をちゃんと一緒に考えてくれる人かどうかのほうが、ずっとずっと大切だ。もしこの選択が間違いだったとしても、わたしは彼と結婚しなかった後悔より、した後悔を選びたい。そう思った。

いつかこのときを思い出して、あの時は若かったとか、世間を知らなかったとか、雰囲気に流されたとか思うのだろうか。この晩婚化の時代にこんなにも早く、しかもバツイチ男と結婚してしまって、若さやキャリアを持て余したまま20代が終わってしまった、とか思うのだろうか。

少なくとも今のところは、何の後悔もない。むしろ、あの頃のわたしグッジョブ!と思っている。

今だったらはっきりと言える。
「わたしの好きな人はバツイチだけど、何か問題ある?」