――インティマシー・コーディネーターの仕事内容を教えていただけますか。

インティマシー・シーン(セックスやヌードシーン)で、制作と俳優との間を取り持つコーディネーターの仕事です。制作側の期待を理解したうえで、俳優を精神的・身体的に守ってサポートしていく役割になります。

例えば、過去に若い女性の俳優さんが、初めてのキスをカメラの前でした。その経験が後にトラウマになり演技ができなくなったという話しを聞きました。若い俳優さんだと、なかなか「NO」というのは難しいですよね。「体を張ってこそ」という文化もありましたし。だからこそ、俳優が「NO」と言いやすいコミュニケーションをとることも仕事のひとつです。

インティマシー・コーディネーターの西山ももこさん

どういう体位なのか、声はどのくらいのトーンなのか…セックスシーンの振り付けをする

――キスシーンはもちろん、セックスシーンはもっと内面を見せるものになりそうで、俳優側の負担が大きいような気がします。

そうですね。台本に「AとBがセックス」としか書かれていないなかで、制作側がどんなセックスシーンを求めているのかを言語化して、俳優に伝えるのも私の仕事です。もちろん、監督から俳優への指示もありますが、デリケートな話なのでコミュニケーションが難しい場合もありますよね。そこをプロとして言語化のお手伝いをします。

他人のセックスを見る機会も少ないので、あえぎ声ひとつとっても、その人の内面がでてしまう。でも、本来そうしたデリケートなものを見せる必要はないはずです。「私」のセックスではなく、「その役の」セックスなわけですから。

どういう体位なのか、声はどのくらいのトーンで、どのくらいの時間出せばいいのか……というのを言語化していきます。振り付けですよね。それをもとに、俳優さんにできるか、できないかを判断してもらい、制作側に伝える。みなが納得した形なので、現場もハッピーな場になりますよね。

――インティマシー・コーディネーターという仕事を私は知りませんでした。でも、この仕事がない場合の撮影現場ってひどすぎないか?とびっくりしています。

そうですよね。たとえば、前貼りも、性器を隠せていればいいというものじゃないと思うんです。俳優さんの体が反応してしまったときに、「恥ずかしい」と思う人もいる。「仕事なのに……」って。でも、体の反応と脳の反応は違う。そこを私がたんたんと本人に説明するだけでも負担は違うのかなと思います。

 性的同意がないまま、セックスを無理強いされたときに「濡れただろ、お前も気持ちよくなってたんだろ」という人がいると思うんですけど、それも全然見当違いな話ですよね。体と心の反応は一致しないので。

なので、例えば、前貼りの上に更にヨガマットなどバリアを作り、できるだけ反応が届かないようにするなど、衣装さんと調整することもあります。そこは、ないがしろにされてはいけないところだと思います。

インティマシー・コーディネーターの西山ももこさん

現場にいる人の多くは男性。女性は声をあげにくいのも事実

――「プロなんだから」と思わされていた部分も多いのかもしれません。

撮影には関係ない複数の男性がいる前で、裸で撮影させられた、という声もありました。そこも、インティマシー・コーディネーターがいれば最低限の人だけでの撮影をできるのかなと思っています。「俺必要じゃね?」という個人的なジャッジではなく、客観的な視点での「最低限の撮影クルー」をだすことができるからです。

現場にいる人の多くは男性です。「俳優ならできるでしょ」ってなっちゃうのかもしれないですけど、現場にいる女性は言えないですからね。

――資格をとるための勉強はどういうものだったのですか?

時差のあるLAとの研修だったので、朝8~11時にオンラインで授業。全て英語なのでそれを自分で書き起こして、理解して、その後課題と小テスト……。とにかく久しぶりに勉強したなあという感じでした。

送られてきた台本を見て、どこにどのようなシーンがあってに、その部分の演出の意図を理解し、インティマシーコーディネーターの立ち合いはどの部分に必要になるかということを学びました。

それからBDSM(嗜虐的性向)の勉強もしました。BDSMっていうのは、SMなどのことなんですけど、勉強していないと「え!そんなことするの!」というリアクションをとってしまうかもしれない。そこは、相手を不安にさせないためにも、たんたんと。いちいち反応しないことで、何を言っても解決してくれる人になることが大事だと思っています。

 

●西山ももこさんプロフィール

高校から大学卒業まで6年間、アイルランドで学生生活を送る。その後 はチェコ のプラハ芸術アカデミーに留学し、(教育学部ダンス科で7年を過ごし、)2009年からは日本でアフリカ専門のコーディネート会社にて経験を積み、2016年 よりフリーランスに転向。
月1~2回のペースでアフリカ、欧米、アジアでの海外ロケだけでなく、国内でのロケ、また国内外のイベント制作に携わる。

現在はドキュメンタリー映画「であること being」をプロデュース・出演。12月に自主上映会予定。