彼に言われ秘密にしていた恋はたった5ヶ月で終わりを迎えた

大学三年生の冬、私は失恋した。
大学の同期で、私と同じダンスサークルに所属していた彼。そんな彼に恋心を抱き始めたのは、大学二年生の終わりごろ。
新入生歓迎の時期にひたむきに頑張る彼に心奪われ、気づいたら仲間としてではなく、一人の男性として好意を抱くようになった。そして大学三年生の年の夏、私から告白してお付き合いを始めた。

結果から言うと、彼と付き合った期間はわずか5カ月間。彼と過ごした時間は、苦い思い出そのものであった。
まず、「付き合っていることを、サークルの皆には引退するまで内緒にすること」を約束としていたのだが、これが大きな間違いだった。
気づけば彼は、彼女持ちだと知られていないのをいいことに、サークル内で後輩の女子と平気でいちゃつくようになった。一方でサークル内では私とはほぼ口を聞かなくなったのだが、問いただしても「だって付き合っていることがサークルのみんなに知られちゃうから」の一点張り。その約束を免罪符に、とにかく彼はやりたい放題だった。

彼の欠点はそれ以外にもあった。それはとにかくお金にルーズであること。以前サークル活動でかかった費用をまとめて立て替え、後で人数分徴収することがあったのだが、彼だけはいつになってもお金を返してくれない。聞くところによると、彼のお金のルーズさは彼を取り巻く各コミュニティでも有名で、他の友人等も皆彼のルーズさには手を焼いていたようだった。

心が砕けるような失恋をした私に母がバッサリ放った一言

こんな彼の致命的な欠点に気づいてもなお当時は彼のことが大好きで、いくら冷たくされようと、いくらお金が返されまいと、「明日、彼に少しでも好きになってもらうためにはどうしたらいいのだろう」「どうしたら彼に振り向いてもらえるのだろう」と、勉強やバイトそっちのけで悩み続けた。もう私の頭の中には、彼しかいなかった。

そんな努力もむなしく、大学3年生の12月、彼から別れを告げられた。心が砕ける音がした。なんで。どうして。わたし、彼に振り向いてもらえるようにあんなにがんばったのに。
失恋から2週間前後は何も手につかず四六時中彼のことを考えていた。年末締め切りのゼミのレポートを11月中に終わらせていたことが不幸中の幸いであった。恋愛経験が少ないからなのか、なかなか立ち直れない。悲壮感と絶望感がぬぐえない。寝られない、食べられない無気力状態続き、とりあえず一週間程度実家に帰ることにした。

「そんなの運命の人で何でもない、道端にたまたま転がっていて、たまたま付き合っただけ」

実家に帰るなり、母にたらたらと未練がましい恋愛相談をすると、母はその一言でバッサリ切り捨てた。
最初は、冷酷だと思った。だって私はここまで頑張ってきたのに。彼に振り向いてもらえるようにあんなに努力したのに。でも、理由はよくわからないがこれまで友人にもらったどんな言葉よりも腑に落ちた。

母が伝えたかった本当の意味。今も私の心に響いている

もしかしたらわたしは彼を「運命の人」と勘違いして、これを手放したらその先一生ひとりぼっちなんじゃないか、もう誰とも付き合えないんじゃないかと不安を抱いていたのかもしれない。
本当は、彼を本当に好きなのではなく、ただ寂しかっただけなのかもしれない。この先新しい人に出会える自信がなかっただけなのかもしれない。私は運命の人に出会ったのだと、勝手に思いあがっていたのだ。そしてそれを手放してしまっては、私の人生はもう終わりだと思っていたのだ。冷静に考えれば、母の言う通りだ。

「だから」
母は続けた。

「少しくらいなら道端で立ち止まってもいいけど、深呼吸してまた前見て歩きなね」

わたしはその後、何人かの男性とお付き合いをした。
結局いろいろなことがあって、今は独り身。特にお付き合いしたいと思う男性も現れない。
今後仮に現れたとしても、蓋を開ければとんでもない素性が隠されているかもしれない。
恐れ多いほど素敵な人と付き合っても、あっさり振られてしまうかもしれない。
それでもいいんだ。人生は、長い道のり。
この先、もしまたあの頃のように恋を失ったとしても。

「あぁ、この人も道端に転がっていただけか。」

過去の男性にすがる必要なんてきっとないんだろうな、と私は思った。