この出来事は、26歳の女性の営業マンが、男性の多い営業部で七転八倒していた3年目の頃の話。

その年、仲の良かった先輩A(男性)の異動が決まり、他の先輩B、Cと4人で送別会を開くこととなった。下っ端の私が店を予約し、こじんまりと楽しい送別会になるはずだった。

他愛もない送別会で、先輩からの予期せぬ「マウンティング」

送別会の中盤、話は先輩Aと私の共通の元上司の話になった。元上司は、数字への執着がすごく、成績的には出来る上司だったが成果を求めるあまり、周りへのパワハラがすごい人だった。「日々のパワハラに耐えつつ、ついて行くのが大変だったよね」という他愛もない昔話に花を咲かせていたところ、いきなり先輩Aが一言。

「〇〇さん(元上司)ぴーこのこと『プロセスを気にしすぎて結果が出ていない』と言ってたよ」

正直、元上司も異動した中でその話をして、私にどう返して欲しかったのか分からなかった。つまり先輩Aから、私への盛大なマウントだ。

たしかに、要領のいい先輩Aは可愛がられていた。一方で、自分が納得しないと物事を進められない私は、上司の指示に対する疑問点を質問して怒られていたし、プロセスまで報告しようとして言葉を遮られた上で叱責されたりもしていた。

上司からすれば部下(私)からの質問に対して、説明をするのもプロセスを聞くのもめんどくさかったのだろう。当時2年目の私は気づいてはいたものの、分からないことばかりで自分の行動を変える余裕がなく、毎回のように怒られていた。

女に生まれたから「仕方ない」って、悔しくてたまらなかった

先輩Aのマウントには腹が立ったが、送別会なので流してやろうと思った矢先、話を聞いていた先輩Bがフォローのつもりで言った言葉が、マウント以上に突き刺さった。

「生物学上仕方ないらしいよ。男性脳と女性脳ってやつ。男性は結果を重視するし、女性はプロセスを重視する。だから、女性の部下が出来て、プロセスの報告をしてきても遮ったらいけないらしいよ。仕方ないことだから」

言われたことを受け止めて、飲み込むのに時間がかかった。
生物学上、女に生まれてしまったが故に、私の報告や質問はそういう受け止められ方をするのか?
生物学上、女に生まれてしまったが故に「仕方ない」と言われるのか?
悔しくてたまらなかった。

男性と同じフィールドで働いていると思っていたが、結局男性社会で生きるということは、こういう主張を飲み込んで仕事をするということなんだなと察した。所詮は会社におけるマイノリティなのだと。

男でもなく女でもない「私の脳」だ。カテゴライズする必要はない!

この送別会から、この先輩Bの言葉の意味、今後の働き方など色々なことを悩んだ。

しかし、1年ほど経ったところで、悩むのをやめた。
悩めば悩むほど、一般的なジェンダー論にハマっていくだけで、私の糧にはならないと気付いたから。

男性脳でもなく、女性脳でもなく、私の脳だ。カテゴライズする必要なんてない。
賢く生きるとするならば、報告相手の求めるものによって、報告の形を変えるのが良いだろう。結果orプロセスどっちが大事かなんて、答えはない。2年目のひ弱な私には出来なかったことも、今の私なら出来る。それだけで十分だと思えた。

5年目になった今年、色んな人の様々な言葉に惑わされつつも、今日もしがない営業マンとして、残暑が続く街を駆けずり回る。