私は、そばかすに長年悩まされてきた。
全体的に色素が薄いせいか、鼻の辺りから頬骨にかけてのそばかすが意外と目立つ。巷では、“そばかすメイク”などといってわざわざそばかすを描くことが流行った時期もあるみたいだけれど「そんなに欲しいなら、どうぞ私のそばかすを持って行ってください」という感じ。
憧れの先輩との共通点。それはコンプレックスだった「そばかす」
色々な化粧品を試したけど、そこまで効果はなかった。むしろ、日焼けすればそれほど目立たなくなるということに気が付いた程度。とはいえ、日焼けもしにくい肌質。「そばかすがなければ良かったのに」と鏡を見るのも億劫な時期もあった。
そんな中、高校時代にある先輩と出会った。頭が良くて明るく、おまけに優しい非常に尊敬していた。あんな女性になれたら良いなと思ってはいたけれど、自分とはあまりに共通点が無く、まさに高嶺の花だった。
ここまで書けば、お気づきの方もいるとは思うけれど、その先輩にもそばかすがあるのだと、あるとき気が付いた。
それまで、近くで顔を見る機会がなかったし、あっても気恥ずかしさから直視はできていなかった。いや、どちらかといえば、そばかすすらも先輩の魅力の一部として、溶け込んでいたがため、気が付かなかったのかもしれない。むしろ、チャーミングさをプラスしてくれるという点で、その先輩をより輝かせていたように思う。
何を「コンプレックス」と捉えるかは、本当に自分次第なのだと悟った
ここで私が嬉しくなったのは、そばかすがあっても堂々としている先輩の態度に憧れたとかではなくて、もっと単純に先輩との唯一の共通点(性別は除く)を見つけたことだった。彼女との距離が、一気に近くなった気がしてワクワクした。
こうなると不思議なもので、自分のコンプレックスだったそばかすは、何か非常に素敵な意味を持つものに思えてきた。
あまりの単純さに自分でも若干呆れたが、これを機に内面の方も少しでもその先輩に実際に近づきたいと感じ、勉強や部活動にも精を出すようになった。たまには勇気を出して、その先輩と話すこともできるようになった。そして、何をコンプレックスと捉えるかは本当に自分次第なのだとも悟った。
そばかすが無ければ、このような変化も自分には起こらなかっただろう。本当にそばかす万々歳。ありがとう、私のそばかす。
かつては憎んでいたそばかす…今では自信と勇気を与えてくれる存在
高校卒業後は、先輩の姿を見かけることも無くなってしまったが、自分のそばかすを見ると彼女のことを思い出す。
大学生になって初めてお化粧を覚えると、あれほど悩んでいたそばかすがいとも簡単に隠れることが分かり、拍子抜けした。それでも、かつてのにっくきそばかすは、今や私にとって重要な個性の一部であり、自信と勇気を与えてくれる存在である。