「ちょうどいい。」これが社会人になって上司から頂戴した、私の評価だった。
可愛い子だと、隣にいて緊張するし、叱れない。でもブスとは一緒に働きたくない。その点、お前はちょうどいい。
職場の同僚たちの前でそう言われる度に、引きつった笑顔をキープする代償として、心の奥の、もっと奥の方にしまってある大切な思い出や感情を、薄く削ぎ取って、悪魔に献上するような感覚になった。正直、辛かった。
何も言い返せなかったのは、相手が上司だったから
もう2年前の出来事ではあるけど内容はマジで笑えないし、なんなら当時の空気がはっきりと思い出されて、いまだに腹の底から喉にかけてキリキリと怒りの嗚咽が押し寄せてくる。
なんで、いつも同じ俳優の名前をど忘れしてるくせに、忘れたいことはタトゥーばりにしっかり身体に刻まれちゃっていて、ちょっと触れるだけで感情までもがフラッシュバックするんだろう。
ちょっとでも油断していると危険。飲み屋のトイレの個室で便器に腰かけた時、そろそろ寝ようとベッドに横になった瞬間にふと、そのモヤモヤはやってくる。ズーンと暗い気分にさせられたと思ったら、次第に悔しさがこみ上げて、気付けば目がギンギンに冴えている。
容姿のことは、本人が一番よく知っていて悩んでいるのに、他人がズケズケ入ってきていい領域じゃない。当然怒って然るべし。でも当時は、どうしても上司に言い返せなかった。どんなに悲しくても、ヘラヘラやり過ごすしかなかった。
なぜか?それは、フェアじゃなかったから。
(私にとって)相手は、自分より上の立場だと思い込んでいたから。なんなら口出しされたって仕方ない、とすら思っていた。
容姿についての口出しは、どんな立場であっても許されない
でも最近は、一切笑い無しで「それマジ失礼なんで、止めたほうがいいですよ?」と、正面切って言えるようになった。私が会社で立場上偉くなったのでもなく、(非常に悲しいことに)相手の意識が変わったわけでもない。
そうなれた理由は、私が「容姿に関して、相手と立場が対等であるべきだ」と捉え直したからだ。これは至極当たり前のことだが、上下関係や相手との親密度に誤魔化されて、忘れがちだなことだ。
仮に上司だからって、相手の方が仕事ができるからって、それ以外のことで良くしてくれているからといって、他人の容姿に口出ししていい理由にはならない。容姿という問題に関わる時、私とあなたは対等であるべきで、それは誰も否定できない。
たまに、「愛ゆえのイジりじゃん」などと論点すり替え術を使ってくる人がいるけど、売られたこの喧嘩のルールはステゴロ。魔術の使用は禁止。フェアにいこう。
この“言い返してみるキャンペーン”を始めてみて、いくつか気付くことがあった。
初回は、相手が「いつもと違うぞ」と察知する空気の流れを感じた。その後3回ほど繰り返すと、大抵の人は何も言ってこなくなった。多分、この遊びに飽きたのだと思う。
容姿のイジりって、笑い無しで言い返されると、ウケないから。これでも止めない人は、あなたにとって何の足しにもならないので、関わらないのが吉。
どうか、同じような悩みを持つ方に1人でも多く届いたら嬉しい。