皆さんは、お味噌汁、好きですか?
私は正直そこまで好きではない。作るのも飲むのも。
実家にいた頃は、あれば飲むが、無いなら無いで何とも思わなかった。海外にいる訳でもあるまいし、恋しいと感じたことは1度もない。味噌汁よりも、ポタージュやミネストローネ、中華スープが食卓に並んだ日の方が、確実にテンションは上がった。

結婚して私が料理をするようになってから、作るスープは自分が好きな洋風のものばかり。私の生活から、味噌汁はますます遠のいた。
パックの味噌を使いきる前に腐らせてしまうこともあったし、サバの味噌煮を作ろうとしたけど、冷蔵庫に味噌が無いという事態も発生した(塩焼きに変更)。結果、数ヶ月間全く味噌汁を作らない日々が続いた。
そんな時だった。旦那が「ねぇ、味噌汁飲みたいんだけど」と言ったのは。

私は内心ドキドキしつつも「ごめんね~最近暑いし面倒で」と答えたが、旦那は、
「いや、相当前から飲んでないよ。半年位飲んでないんじゃない?」と答えた。
た、確かに。実際その可能性はあった。

私は即座に「ごめんね私、実はあんまり味噌汁好きじゃなくって。最近魚も高いから、和食の機会も減ってたよね~。そこまで飲みたいんならレトルトの味噌汁買っとくよ」と早口で言い訳を並べ立てたのだが、彼は明らかに不服そうな顔をしていた。

味噌汁が職場の話題に…!?

旦那が不服そうな顔をするのも、当然である。先日、「ポテサラや唐揚げを作るのは簡単か?」という話題がバズったが、それこれとでは、まるで話が違う。
私はそれらの料理よりも、ずっとずっと調理工程の少ない、まさかの「味噌汁」を作り惜しみしているのだから。
「味噌汁を作るのは簡単か?」という問いかけでは、確実にバズらない。

また、私の旦那は、レトルト食品を自分で調理(?)することが好きではない。私が居るなら、私に頼む。彼がしぶしぶお湯を沸かしたり電子レンジでチンしたりするのは、私がその部屋に居ない時だけなのだ。おそらく彼は、「他人の作った料理が食べたい」のだと思われる。そりゃ、私もそうですけどね??

後日、旦那が「あのさ~味噌汁の話、職場でしたんだけどさ~」と私に言ってきた。
青天の霹靂。私は彼の職場の皆さんに有り難くも可愛がってもらっている。私の嫁として至らない点を勝手に暴露されて、お茶飲み場で笑われていると思うとめちゃめちゃ恥ずかしくなった。マジで、やめてほしい(クレーム)。

「やめてよ~…で、皆さん何て?」と私が恐る恐る聞くと、「奥さんも味噌汁ぐらい、作ればいいのに、だってよ」とのこと。
そ、そうだよね…。
分かってはいた事ではあるが、結構ショックだった。
我が家の奥さんは、旦那さんに味噌汁を半年作らない女なのだ。…うん、それは私の事なんだけども…。

旦那は続けて「でも、自分でレトルトのやつ作ればいいのに、とも言われた」と言った。「そうだよね!?そんなに恋しいなら自分でお湯入れて作ればいいよね!?」と、有り難い助け船にすがる私。

でもそんな憐れな私の目を見て、旦那はこう言うのだった。
「僕はさ、いくらちゃんに味噌汁を作って欲しいんだよ」と。
…やっぱりな。

和食は家庭の味、味噌汁は母の味、というイメージは、確かにある。旦那にとっては妻の味であって欲しいということだ。「妻が味噌汁作って家で待ってる」…確かに、なんだか暖かい響きではある。

具だくさんの「豚汁」登場。でもあのやり取りは忘れない

そんなやり取りから1年ほど経った最近、巷で「スープダイエット」が流行りだした。何度目かのブーム再来だと思う。具沢山のスープを食事と置き換えた、いわゆる低糖質のダイエット法のひとつだ。私は減量中の旦那に、毎日具沢山のスープを作ることにした。

毎日野菜を沢山使うとなると、自然と冷凍庫にカット野菜がストックされるようになった。するとどうなったか。
私は具沢山の「豚汁」を頻繁に食卓に並べるようになったのだ。

豚汁って、味噌汁の上位互換的な存在ではないだろうか。私は豚汁なら喜んで作れた。自分のためにも、子どものためにも、旦那のためにも。美味しかった。
な~んだ、味噌汁、やっぱり作らなくてもいいんじゃないか、豚汁でよかったんだ!!

とはいえ今になっても、あの味噌汁についてのやり取りがあったことは、しっかりと覚えている(旦那の職場で笑われたしな)。だから私もしぶしぶ味噌汁を作ることはあるし、キッチンの引き出しには、レトルトの味噌汁が常備されるようになった。
私は家庭の味という世間体を維持するために、たまに味噌汁を作っている。

近未来の「家庭の味」

圧力鍋やバーミキサーが各家庭に普及した今、味噌汁を毎日のように飲む家庭は、実際どれほどあるのだろうか。我が家ほどとなるとさすがに極端な例だとは思う。しかし、全国的に見ても味噌汁が食卓に並ぶ頻度は減少しているのではないだろうか。そして、いわゆる家庭の味というヤツも、刻々と変化していると思われる。

家庭の味ってなんだろう。ふつうの食卓ってどんなもの?
最近料理をしていて驚いたことがある。それは「どのご家庭にもあるもので作れます」と書いてあるスープダイエットのレシピ本を読んでいた時。レシピに使用する調味料の欄に、平然と「ナンプラー」と書かれていたのである。家庭の味の近未来を見た。

私の旦那はレトルト調理すら嫌う人だ。そして私の作る味噌汁が飲みたいと言う。私に言わせれば、ちょっぴりワガママだ。
しかし、それなのに半年も味噌汁が出てこない生活に耐え、その上で直訴してきたことを思うと、健気だなぁ、とも思う。ごめんね。

そんな訳で、私は今日も、せっせと具沢山の豚汁を作るのだった(味噌汁ではない)。
「妻が豚汁作って家で待ってる」ゾ。