始まりは小学生のころ。何かで私をジャッジしている、とわかった
私は物心ついた時から「スタイルいいよね!」という言葉をかけられてきた。
初めに言われたときは、おそらく小学生になる頃。”スタイルがいい”ってどういう意味か知らなかった。何か嘲笑されているわけではない、ということは幼い私にもなんとなく理解できたが、それと同時に何かで私をジャッジしている、ということもわかった。大人が使うような褒め言葉なんだろう、と思いあまり気に留めず、深く言及することはしなかった。
そして思春期を経て、私の身体は成人女性へと成長した。
前述したような台詞を特に言われるようになったのは大学生になってからだ。バイトや実習先、インターンシップなどで人と関わらなければいけない機会が増えた。社会人になって就職先2カ所でも言われた。
言葉にできないモヤモヤが渦巻く。褒められているのに、どうして?
「スタイルいいね!」「脚長いね~」
さすがに大学生の頃には”スタイルいいね”が、他者に投げかける外見への褒め言葉だということはわかっていた。外見にコンプレックスがあった私は、自分が外見で他人に認められている!という嬉しさもあった。しかしその反面、言葉にできないようなモヤモヤが身体中で渦巻いていた。
褒められて嬉しいはずなのに、どうしてだろう。
そして、大学4年生の実習中にある出来事が起きた。
私の実習先はとある高齢者介護施設だった。レクリエーションに私も見学と参加をさせていただく、というものだった。私が利用者さんの前方に立っていた時に、いつも元気で明るい盛り上げ担当の女性スタッフさんが私を指して大声で言った。
「皆さん見て!学生さんすごくスタイル良くないですか?ね!脚も長くて!」
一瞬の沈黙が訪れ、私はガツンと頭を殴られたかのような衝撃を受けた。うまく笑顔が作れない中で「い、いやぁ…」と言ったような気がする。
そう思っていても言わずに心の中に留めておいてほしかった。急に十数名の前で見世物にされた。悲しい、屈辱的だ。と頭の中では思考が止まらなかった。
言った側は褒め言葉だからそんな意図はない、と主張するだろうけど
女性スタッフさんも、私を嫌な気持ちにさせたくて言ったわけではないのは重々承知だった。せっかく見学しているのに黙っているから話の輪に入れようと気を遣っていただいたのかもしれない。少し静かになってしまったから、何か話題がほしかったのかもしれない。でも、私は1年経った今でも忘れられないくらいショックだった。明るくて、質問にも優しく答えてくれる元気な女性スタッフさんが好きだったのに、その出来事以来話すのが怖くなった。
”スタイル良いね”は「あなたの身体をジロジロ見た上で、私の中でジャッジしました」と同じだ。おそらくどんな人でも言った側は褒め言葉だからそんな意図はない、と主張するだろう。
褒め言葉だろうが、悪意がなかろうが、人をジロジロ見た上に生まれ持ったものを評価して、ましてやそれを口に出すなんて”失礼”なことだ。