中学のとき、「the」を習った。「それ」と訳すらしい。でも私は「the」の使い方がよくわからなかった。
thisとかthatとかaとかなんかよく似た親戚なのか?!みたいな単語が多すぎて、英作文のときに困ってテキトーに付けてた。(で、めちゃめちゃ間違ってた)

「the」の本当の意味を知った

私は大学になって、英語は全く喋れなかったし高校時代大嫌いだったにも関わらず、どういうわけか英語の語源的な本にどハマりして読み漁った。そのときに私は初めてtheを本当の意味を知った。

「the」の意味の一つに『世の中に1つしかないもの』という意味があった。
世界に1つしかないもの、例えば月は1つしかないから、the moonという。確かにtheが付いた気もするし、しなかった気もする。

イギリスの正式名称は英語で、
the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland と言うらしい。
お気付きかと思うが、そう!国名の前に、theがつくのだ!!きっとこれは(個人の見解だが)誇り高き英国を堂々と表現しているに違いない。世界で一つしかない国!なんてカッコいい国なんだ!!と。

私は天空の城ラピュタが大好きなのだが、家の壁紙に貼ってあるポストカードには『Castle in the Sky』と書いてある。空にもtheが付いている。
ラピュタが空から降ってくるあの空も、何もかも嫌になってボーと見ている曇り空も、季節が反対のオーストラリアにいるテニスプレーヤーの友人の上にある空も同じ、世界に1つの唯一の空だと思うと私はなぜか妙に震えるほど感動した。

少ないバイト代でダイエットサロンに通った

私は大学生のとき72キロあった。
そして(自分としては)太っていたときの自分はワーストワン、最低で醜い奴だと思っていた。
コンソメ味のポテチを夜にやけ食いしてしまう惨めな自分をいつしか、悲劇のヒロインに仕立て上げていた。

確かに周りからもデブキャラ扱いされて、ボランティア先のおじさんに「お父さんも太ってるの?」とか、サークルの飲み会の席同期の女子に「体重教えてよ!」とかネタで色々言われた。
バイトの引越しで荷物を運んでいるときに、引越しのお兄さんが「手伝いましょうか?」と聞いてくれたが、周りの男性数人は「愚問だな!」と言って鼻で笑った。
さすがにこれは冗談にしてもグサッときた。

私は最低な自分を変えたいと思い、少ないバイト代でダイエットサロンに通った。結果、8キロ痩せて、健康的な体型になった。

が、私は自分の中で最高!と思うことは1回もなかった。あんなに太っていたときは、痩せたらきっと天国!大好きな私!モテまくる!と妄想していたのに。

私は毎日リバウンドを恐れていた。好きなチョコチップクッキーも明太子パスタも我慢してたし、1キロでも太れば、崖から突き落とされた気分だった。泣きそうだった。

毎日私は体重計の針に一喜一憂させられた。
そのとき私は自分はとことん意志の弱いダメなやつだと責めた。
最高ではなくむしろ最悪の自分だと思ったのだ。

今だから分かる。
人生はいつだって曲線だが、二次関数で言えば、太っていたときが最小値(最低)なわけでもなく、痩せていたときが最大値(最高)なわけではなかった。

朝起きてシンデレラになっていたら、そういった劇的ビフォーアフター現象は起きたかもしれないけれど、意外と痩せても周りは気が付かなかった。
徐々に体型は変わったし、恐らくそんなに見られていたわけでもない。
私の中身は変わらないから、男子からのいじられ方も特段変わらなかった。

今が1番幸せな最大値だと思っている

私はそこで、ようやく気がついた。太っても痩せてても自分は自分なのだ。
私は案の定、ばっちりリバウンドしたが笑、自己否定することが減った。

体重計の針は私を最大値にも最小値にもできないし、もう絶対させない。
だって健康とか家族とか仕事とかもっとたくさんのいろんな大事な要素が集まってわたしたちは生きているのだから。

あの時より、辛くて毎日消えてしまいたいと泣いていた持病がゆっくり治ってきている今が1番幸せな最大値だと思っている。

何か自分の中で変化があって、それを誰かに否定されたり、思うようにいかなかったりしてもあなたは唯一無二の貴重すぎる存在であることは何一つ変わらないと思う。

誇り高き存在であり、誰もあなたの代わりは絶対にできない。空と同じで世界中どこにいても、誰といても、例えば太っていても痩せていてもあなたはあなただ。

無理して、絶好調!という必要は全くない。
ただ、今のあなたも昨日までのあなたもかけがえのないあなただ。
例え体重計の針が今まで見たことがないものだったとしても。
誰かに自分を酷く否定されたとしても。

今を最高値にできるのは体重計の針ではないし、他人でもない。
あなたしかいない。

私は今更ながらペンネームの前に「the」を使わなかったか大いに後悔している。

まあ、これは冗談だが、あなたの前にはいつだって「the」があることを忘れないでいてほしい。