脱毛サロンに行った。デリケートゾーンのケアは欠かせないようで、乾燥した今の肌のままだと、完全脱毛するまでにはさらに時間がかかるそうだ。
「最終的に、どのような状態にしたいと考えていますか?」
 私のデリケートゾーンを? 正直なところ、何も考えてはいなかった。とりあえず契約を終わらせて、それからまだ変えたかったら新しく契約を……。戸惑っている私をよそに、お姉さんは「今契約を変更したほうがお得ですよ」と勧めてくる(それは本当のことなんだというのは分かる)。
 やっぱり、デリケートゾーンを全て脱毛して、綺麗なままでいたくないですか?
 うーん、本当に?

ケアができない女、と烙印を押された気がした

 なんだかこの日は何もする気になれなかった。この日の脱毛時間は一時間にも満たなかったけれど、私はケアができない、改善するべきところがたくさんある女、と烙印を押された気がした(とはいえ、私は普段ボディケアとかやらないから、その通りなんだけど)。
 ひどく疲れてしまって、午後五時なのにコーヒーを飲んだ。これでまた自律神経が乱れて、今の「生理後なのに鬱」状態がずっと続くかもね。夜も寝たくなくなるかも、とはいえ深夜に活動的になれているわけでもない。

 今日はヒールを履いているから、骨盤がまた歪んでしまうよね。それで、ただでさえ小さい右目がさらに小さくなるかも。そしてまた、どんどん不恰好になっていく。

「輝く女」になる、そんな体力ないや。疲れちゃった

 私にとって、身体とは管理しなくてはならない煩雑なものだ。例えば、私は甘いものも食べたいけど、食べた後にたいてい体調を崩す。かといって、まるきり食べないってわけじゃないから痩せているわけでもなく、私は日本人女性にしては太いほうだと思う。特に脚。前は積極的に毎日筋トレをして食事制限をして、痩せてたんだけど、でもさ。
 でもさ、なんのために細くなってたんだろうって。私はただ、世の中の「可愛い」基準から外れていることが恥ずかしくて仕方がなかった。その時は二次元に彼氏がいて(フィクトセクシュアルとかっていう言葉が最近は当てはまるのかな? とにかく私の恋愛対象は三次元だけじゃない)、彼の隣に並びたい! って思えたから頑張れた。
 そしたら三次元でも思うようにモテるようになったよ、それで私は自信もつけちゃった、ご愁傷様。

 なんていうかさ、こういう自信って、他者依存的だからなんの意味もないんだよね。今はもう、自分のことを可愛いと思えない。っていうのも、私はダイエットしてないし、脱コルにほんのちょっとでも関わりたいからメイクもしてないし、ヒールもなるべく履かないようにしてる。最近はジーンズばっかり、スカートも全然選ばなくなった。「輝く女」になるには、私が今無視してるこれら全てをやった上で、仕事や趣味にも精を出さなきゃでしょ? で、それを続けなきゃじゃん。
 私、もうそんな体力ないや。疲れちゃった。

今の私は、ただ怠けてるだけって思わなくもない

 身体に振り回されない自信をつけたいから、なんとなく今のままでいるけど、時々思う。
 これもこれで、正しいのかな?

 私には私なりの、綺麗=魅力的になれる自分の磨き方があるはずなのに、なんとなくそれすら放棄してしまっている気分になる。例えば、私の顔や身体のいいところ、そこにもっとフォーカスして、そこをアピールポイントにするとか。少なくとも、理想の身体像を持っておいて、努力する、そのことが実は一番ひたむきで美しいんじゃないかな、とか。
 今の私は、なんだかただ怠けてるだけで、ぼうっと人生を生きてて、つまらない人みたいだなって思わなくもない、正直なところ。

女の身体に関する価値観がひっくり返ったりしないかな

 身体ってなんでこんなに煩雑なの、私の身体のはずなのに、どうしていつまでたっても他者の刻印が消えないの。そのせいでただひたすら内向的に、精神偏重になってくる。身体の喜びを求めるのもひと仕事。あーあ、私のため息で国土が揺れて、女の身体に関する価値観がひっくり返ったりしないかな、しないよね。

 どこでもない、新たな平地で、女の身体の価値と喜びを見出したい。
 私はもっと、この身体をどこまでも拡張して、なんだか分からなくて古臭い、いろんなボーダーを越えてみたいのに。いつまでたってもクヨクヨ身体に縛られちゃう、来年はそれを変えたいかも、ね。