「大きいね」
付き合って1ヶ月の彼氏が、私の胸に触れながら、嬉しそうにそう言った。
その時私たちは二人きりで、キスを何度もした後で、私は息を切らしていた。
自分から好きになった人と、付き合うのはこれが初めてだった。
彼とすること全てが新鮮だった。
クリスマスの名残、外にはイルミネーションが残っていた。
キラキラと光ってとても綺麗だったのを覚えている。
自分の胸を大きいとも小さいとも思ったことがなかった。
その日私はピンク色の、胸元にパールやビジューのついたタートルネックを着ていた。
その日の初めてのセックスを断り、さらに次の日のセックスも断り、一度も体の関係がないままその人とは別れた。
私の部屋の洋服だんすの中には、パールやビジューのついた、ピンク色のタートルネックだけが残った。
あの日と同じタートルネック。強調した胸に視線を感じるけれど
やがて春が来て、夏が過ぎて、秋が去って、冬になった。
私はパールやビジューのついた、ピンク色のタートルネックを着て、パッド入りのブラジャーをつけて、胸を下から持ち上げる、コルセットを腰に巻いていた。
当時大学生だった。
プリンターの前で、講義に使うレジュメの印刷を待っている時だった。
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隣からの視線をはっきりと感じ取った。
私の隣のプリンターの前に立った男の子は、ちらちらと私の顔の下を見ていた。
視線は明らかに顔ではなかった。
首よりも下、胸だった。
あの日「大きいね」と言われたあの時よりも、
私の胸元は出っ張っていて、少しでも屈むと、アンダーバストのあたりにくっきりと線が見えた。
プリントを回収してから、トイレに入って鏡を見た。
真横から見る体の曲線は明らかにはっきりとしていて、
ぴったりとした素材の服と、ブラジャーの中に入ったパッドと、コルセットがものすごく胸を強調していて、パールやビジューなんかほとんど目に入らなくなっていた。
見られたい人がいるから、アピールしているだけ
私はまだ彼のことが好きだった。
自意識過剰かもしれない。
でもたぶん確実に、その日私はたくさんの人に見られた。
私と話す男の子はみんな、私の首よりも下を見ていた。
でも私は、彼らに見られたいわけじゃなかった。
私は元彼のことが好きだった。
あんなに好きだったあの人に褒められたことがあるのが、
顔がタイプ、よく食べる、胸が大きいだけだなんて笑ってしまう。
大きい胸を強調している、女の子を見るたび思う。
彼女たちは男性たちの視線を集めてる。
でもそのうちのほとんどが、彼女達にとってお呼びじゃないし、眼中になんか入っていないのだろうと思う。
見せたい人がいるのかな、そんなことを勝手に思う。