「先輩の言うことは間違っていてもすみませんと言え」を正しいと思っていた

大学を無事卒業し、看護師試験に合格して念願だった看護師になった。看護実習も大変だったが、本物の看護師さんは想像を超えるほど大変だった。
毎日できないことが多すぎて、先輩に怒られるの繰り返し。毎日、どうやったら先輩に怒られずに過ごせるのか、ということを考えながら仕事をしていて、患者さんのことを考える余裕もなかった。
入職して4ヶ月目、夜勤で10人の患者さんを受け持った。とてもやることが多く絶対に1人では回れないと思ったけど、誰にも頼むことができなかった。夜勤明けで先輩にめちゃくちゃ怒られたあと、トイレでワンワン泣いて立てなくなってしまった。
入職する前、「もしいじめられたらすぐに辞めるから大丈夫だよ」とお母さんに言っていたけど、別にいじめられている訳ではない。先輩の言っていることは全部正しいし、自分ができないのが悪いだけだから、と思っていた。
気づけば仕事で怒られて家に帰ってはそのままベッドで死んだように眠る日々…朝慌てて起きて、怒られた内容の勉強をして、仕事に向かった。毎日嫌で嫌でしょうがなくて、でも逃げ出す勇気がないから、乗っている電車が爆発してくれればいいのにと思いながら。でも電車はちゃんと職場の最寄駅に着いて、ああ今日も着いてしまったと思っていた。
入職して10カ月程経ち仕事がある程度できるようになってきた頃、わたしに過剰に怒ってきた先輩たちは大したことがないなと思うようになってきた。
夜勤中いっぱいいっぱいで回れていない新人に「あなたの患者さんトイレ行きたいんだって」と電話を掛けてきたり、「前にも教えたよね?1回見たら1回で覚えて。給料もらっているんだよね?」、「先輩が言ったことには言い訳しない、たとえ間違っていても黙ってすみませんと言いなさい」と言ってくることが間違ってると看護師7年目の今なら分かる、でも1年目のわたしには全て正しい言葉に聞こえたのだ。
結局その職場で5年働いた。同期や一部の素敵な先輩に恵まれたのもあって2.、3年目頃から仕事が楽しくなったけれど、同じ職場で働いて年数を重ねていると自分もあの先輩たちに近づいていっているような気がして辞めた。でも辞めたときの新人看護師さんから泣きながら長文の感謝の手紙をもらって、あの先輩のようにはなっていなかったんだと安心した。
わたしは新人看護師の頃きっと受診をしたら何かしらの診断が出ただろう。健康な今考えると電車が爆発しろなんて祈りながら毎日電車に乗るなんて正気の沙汰じゃない。今は絶対爆発しないでほしい。あの時は目の前のことが全てだった。
看護師1年目、社会人1年目って本当に真っ新な状態。右も左も分からないから先輩の言うことが全て正しく聞こえる。でも、でも、自分の心や身体が元気じゃないと思うのならそれはもしかしたら間違っているのかもしれない。わたしは無理して働いて結果今に至ったけど、あの頃の自分があったから今があるなんて思わない。あの時辞めていたとしても、元気にどこかで働いていると思う。
頑張ることは素晴らしいことだと思う、でもどうかみんな無理をしないで。今の仕事だけが全てではないよ。
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