金髪にした理由は「バイトをしたくなかったから」
大学3年生の秋、初めて髪を染めた。しかも金髪に。
理由は「しばらくアルバイトをしたくなかったから」である。
我ながらに突飛で尖った理由だと思う。ブリーチを担当してくれた美容師さんにも「ん?」と首をかしげられた。しかし、それが本当の理由なのだから仕方がない。
私はアルバイトが長続きしない。これは私に問題があるのではなく、あくまでバイト先の方が問題を抱え過ぎていたのだということを私は主張するが、傍から見たらただバイトが続かない人だということは分かっているので、その点は素直に認めるようにしている。
しかし、もう限界が来てしまったのだ。口だけは一流な雇われ店長には二度と頭を下げたくないし、コロナも収まる兆しが見えないし、実家暮らしで食うには困らないので(母さんいつもありがとう)、しばらくはアルバイトをするのをやめようと決意した。
決意するにあたって何かしら「きっかけ」のようなものが欲しかったのかもしれない。またはしばらくアルバイトを始めることの出来ない理由となる「何か」。私の場合、それが金髪だった。職種にもよるが、大抵のアルバイトは黒髪であることが必須だ。金髪であればひとまずチェーン店で働くことは出来ないだろう。願ったり叶ったりである。
黒髪じゃなくてもいいバイトがごくわずかなんて妙な話
しかし、妙な話だ。髪の毛が黒くなくてもいいアルバイトが、ごくわずかに限られるなんて。ある種の容姿差別ではないだろうか?
「いやいやそもそも日本人の髪色は黒なんだし、普通にしてればいいじゃん」という反論が大抵の人から返ってくる。確かに、私も金髪にする以前はそのような考えを持っていたように思う。
しかし、髪を染めたところで私という人間の内面は変わっていない。むしろ変わったのは周囲の人々の私に投げかける視線や接し方である。もちろんネガティブな変化ばかりではない。
電車を降りる時におじさんに突き飛ばされることが無くなったことに関しては、大変にありがたく思っている。そういう自己防衛的な働きを金髪がするのなら、私は若い女性に髪を染めることをむしろお薦めしたいものである。
髪色は主張だ。どういう風に見せたいかの表現手段だ
髪の毛の色と人間性はイコールではない、と言い切りたいところではあるが、私はそうも言い切れないと思ってしまっている。なぜなら髪の毛の色は主張であるからだ。自分をどういう風に見せたいかという、ひとつの表現方法であると思うからだ。だからこそチェーン店が黒髪の大学生をアルバイトに採用することも、就活生が全員そろって黒髪に染め直すのも納得が出来る。
しかし「それでいいのか?」かと問いかけられるとyesとは答え難いのである。2020年12月中旬現在、正直答えは出ていない。
来年は就活。金髪の寿命もあとわずか…?
しかしながら私は来年大学4年生になる。ということは、逃げ続けていた就活に捕まることを意味するため、金髪の寿命もあとわずかという事になる。本当は文筆業や創作活動で食っていきたいけれど、奨学金も借りていることだし、フリーターは先が見えないし、黒髪に戻らざるをえないと思う。
しかしいつか、いきなり金髪に戻したとしても周囲から白い目で見られないような人物になりたいと思う。願わくば、そんな人物にならなくても髪の色くらい自由にさせてくれる社会にいきたい、と21歳金髪の私は、そんな思いをなんとなく馳せてみる。