剣道部の顧問から体罰。あちこちに痣ができ、大柄な人を見ると体が震えるようになった

自分では、健康で日常生活に支障がない健常者だとは思えない。でも、このままのわたしで生きていこう。
突発的に浮かんだふつうじゃない道に、わたしは進む。
中学生で剣道部に入った私は、まんまといじめられた。
真面目な優等生。そこそこ運動神経も良かった。
大会で良い成績を残したら、部室に入れさせてもらえなくなった。私物がなくなったりもした。
当時は体罰がギリギリ認められていて、顧問による追い込み稽古なんかもひどかった。
壁際に追い詰められて、泣くまで竹刀で打たれ続けた。
細い棒みたいな身体のあちこちに痣ができて、何をするにも痛かった。
それから私は、熊みたいな大柄な人を見ると体が震えるようになった。
程なく私は、体調を崩した。
部活に行くのが怖くて、「病気になれ」と願ったら、体が応えてくれた。
37.8℃の微熱と頭痛が1ヶ月続いた。
いろんな病院に行ったけど、結果はわからなかった。
「何らかの失調症かもしれません」と言われたこともあったけど、母は精神科には連れていってくれなかった。
でも、学校にはいかなくちゃいけない。
部活にも戻らなくちゃ、いけない。
そんな理想と、
微熱と頭痛で朦朧とする現実の間で、私は自分を責め続けた。
当時流行っていたネイルケア用品で、爪を削ってバッテンの印を入れた。
私はダメな人間だから。ダメな人間の証をつけた。
それから私は、爪を無意識にむしるようになった。そうじゃないと、安心できなくなった。
何度死のうと思ったかわからないけど、今でも私は生きている。
息を詰めながら、逃げながら。
たまに立ち向かって、ぼろぼろに傷つきながら。
そんなこんなで生きてきたけど、
熊みたいな大柄な人を見れば未だに体は震えるし、
左手の親指の爪はどうしても、半分しかない。
落ち込むと全ての音が自分を責めているような、幻聴が聞こえたりもする。
気になってちゃんと調べてみて、本当に精神障害かもしれないことがわかった。
母に相談したら、「あなたにそんなふうに思って欲しくない」と言われた。
母に投げられたどんな言葉よりも重かった。
「考えすぎだ」「おかしい」「普通じゃない」
今まで母に言われてきた言葉はどれも、わたしに起因するもので。
つまり、傷つくのはわたしのせいだと言われているようだった。
もう、つらいんだ。
わたしずっと頑張って生きてきた。
生きるために、体は震えて教えてくれる。
生きるために、爪をむしる。
生きるために、幻聴を聞く。
そしてまた生きるために、この症状たちに向き合いたい。
爪をむしり、恐怖に身をすくませることは、わたしにとっての、危険を伝えるセンサーだ。
そしてその中に広がる、わたし自身は、ちゃんとある。
ふつうが健常者としたら、わたしはふつうじゃない。
だけど、それを超えた先に、生きやすさが広がっている。
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