ふつうになんかなりたくなかった。
大学を卒業して、企業に就職して、結婚して、家族をつくる。そんな人生がふつうだと思っていたし、こんな人生はまっぴらごめんだった。
私はふつうになんて絶対なりたくなくて、自分の名前を世間に轟かせる存在になりたいし、なるんだろうと信じていた。就活なんてする予定は、もちろんなかった。
数十万もかけ挑んだ就活に苦労し、入社した会社も2年で転職
でも、私は失敗した。学校の校則が、体調を崩したから、いろいろ言い訳はしたけれど、とにかく私は失敗して、有名になんかなれなくて、ふつうに就活することを選んだ。いや、選ばざるを得なかった。
就活はうまくいかなかった。就活予備校に数十万円お金を払っても、第一志望には一次面接で落ちた。最後は納得の行く素敵な企業に内定をいただいたけれど、友達が難なくクリアしていく(ように見えた)ハードルに、私は何十万円もかけたのだと思うと悲しかった。
ふつうになんかなりたくなかったけれど、ふつうより下に外れてほしいとは一言も言ったことがなかったのにな。
就職してもうまくいかなかった。会社はとっても素敵だったけれど、新卒で配属された部署がどうも私に合わなくて、2年で転職した。転職は決して珍しいことでも、悪いことでもないけれど。ブラック企業だったわけでもないし、さすがにもう少し長く働くもんじゃないの、ふつうは。
あれだけ嫌だったふつうを求めている私に気がついて、なんだか力が抜けてしまった。
「ふつう」を壊したくてミスコンに出場。結果は振るわなくてもいい経験
ふつうはどこにあるのか、ふつうより上、ふつうより下ってなんなのか。もうわからなくなってしまったから、とことんふつうから外れてやろう。
そんなふうに思って、私はミスコンテストに出場した。会社員は、会社の外で活躍の場を求めるものではないという私の中の"ふつう"を壊してみたくなったのだ。
結論から言って、結果は全然振るわなかった。受賞なんて夢のまた夢。でも、ステージで私にピンスポットが当たるのは、私の中では全然ふつうじゃない経験だった。
ふつうの会社員に戻りたくないな、と思った。たとえ、私が私の名前で世に出ていくことが、会社員としてはふつうより下に外れることだとしても。
そう思ったら、ふつうという基準が私の心にあることがアホらしくなった。ふつうより上とか下とか、もうどうでもいいな。ていうか、私がふつうかどうかとか多分誰も気にしてない。
ミスコンなどの経験から女性への啓発活動開始。人生で今が一番楽しい
コンテストが終わったら削除しようと思っていたInstagramの実名アカウントは、今も細々と更新している。ミスコンや大学時代の経験から問題意識を持った、若い女性の痩せすぎについて啓発したいという活動も少しずつ始められている。
正直、今が人生で一番楽しい。ミスコンに出て、会社とは別に自分の名前で動いて。ふつうになりたかったけれど、やっぱり私はふつうじゃない方が向いてるみたい。
思えば、この活動も「女性はこの体型が美しい」という"ふつう"の呪いから若い女性を解放するためのものだ。ふつうなんて、外れてしまった方が自由になれると伝えたい。20代前半、ふつうに振り回された私だから言えることがきっとあるはずと信じている。
"ふつう"はこれぐらいの年齢で結婚するでしょ。
"ふつう"女性なら子どもを産みたいと思うはず。
"ふつう"はこの年齢ならこんな洋服は着ない。
これからも、きっと私は性別で、年齢で、働く場所で…いろいろなふつうの枠組みに当てはめられて生きていくんだろう。
でも、私は大丈夫。だって私はもうふつうじゃない。
ふつうじゃないって、信じられるから。
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ミス神戸大学 No.3 中島梨沙さん
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