私は1年中長袖を着ている。どんなに暑い夏の日も1人長袖のカーディガンを羽織っているのだ。理由はただ1つ。私には右腕にリストカットの傷跡がたくさんあるからだ。

学校では常に笑顔。本音では「消えてしまいたい」という思いだった

私がリストカットを始めたのは高校生の頃。
家庭環境が悪く精神的なバランスが崩れたが、誰にも相談する事が出来なかった。
学校では常に笑顔の私でいたので、誰も私が悩んでいる事を察する友人もいなかったのである。

本当は大声を出しぼろぼろ涙を流して泣きたかったが「笑顔の私」というみんなのイメージを崩すのが申し訳なく思い、常に笑顔を振りまいていた。しかし本音の私は「消えてしまいたい」その思いでいっぱいだったのだ。
私は自分の心の苦しみや痛みを、自分自身の身体を傷つける事によって誤魔化そうと思った。

別に誰かに傷を見てほしい、気づいてほしい、そんな思いは全くなかったので夜自分の部屋でこっそりと切った。
涙が止まらなかった。不思議と痛いという感覚は全くなかったが、一瞬で自己嫌悪に陥った。
「こんな事しても何も解決しない」と言うことをすでに理解していたからだ。

自業自得とは分かっていても、「気持ち悪い」と言われると悲しい

しかし、私のリストカットは日に日にエスカレートしていき次第にはコントロール出来なくなってしまった。
深く切り過ぎて何度も縫合手術を受ける事になり両親にはさすがにバレてしまった。
そしてついに腕を人前に出すことが出来なくなった。

自業自得の傷跡と分かってはいても、薄着の季節になると「自分もみんなのように半袖を着たい」と羨ましく思うようにもなった。
しかし人前に出せる腕ではなくなったので、私は外で半袖を着ることは一切なくなった。
病院の先生は「○○ちゃんの腕、線路みたいだね」とハッキリと笑って言ってくれるので毎回救われている。

以前1度だけカーディガンを忘れた時に、電車で多くの人にジロジロ見られたり、「あの腕気持ち悪い」とコソコソ話しているのが聞こえたからだ。
当然と言えば当然の事かもしれない。傷跡だらけの私の腕は気持ち悪いと思う。
しかし私も1人の人間。「気持ち悪い」と知らない人に言われると悲しくなる。

他の人を大切にしていくためにも、まずはありのままの自分を大切に

私は傷跡を隠すための医療メイクの勉強にも参加した。そこでは身体に傷跡や火傷、あざがある方とも出会った。それぞれ自分の身体にコンプレックスや悩みを抱えていた。そして知らない人から心ない言葉を言われた経験があった。
私の場合は自分で作ってしまった傷跡ではあるが、身体に対しての悩みは同じだ。

傷跡がある以上、何もなかった綺麗な腕に戻る事はないし堂々と人前に腕を出す事も出来ないと思う。
腕に関してたくさん悩んだり泣いたりもしたが、よくやく私は自分自身の腕を「恥ずかしい」と思わなくなった。自分の身体が他の人と違う事をコンプレックスに感じて自分で自分を「恥ずかしい、嫌い」と思ったら、きっと自分の事を認めてあげる事が出来なくなると思う。

人の違いを認めてあげれるようになるには、まずは自分を認めてあげれるようになる事が大切だと思う。
簡単そうで難しい「ありのままの自分を認める」。他の人を大切にしていくためにも、まずは自分自身を大切にしていきたいと思う。