愛してやまない私の親友とは、もう20年以上の付き合いになる。

オムツが外れるか外れないかぐらいの頃から気づけば隣にいて、学校では毎朝会った瞬間から即興コントが始まった。前日に見たバラエティー番組をそのまま再現したり、YouTubeのお笑い動画を真似したり、時にはただひたすら思い付くままに歌って踊ったり…

私がボケれば彼女が全力でツッコミを入れ、彼女がボケた瞬間に私はツッコミながら笑い転げていた。

担任の先生からは毎度「お前達もう少し女子らしく、おしとやかにしろー!」と怒られていたけれど、それさえも面白くて二人であっかんべーしながら駆け回っていた。

休日はファミレスでポテトをつつきながらドリンクバーの薄い炭酸ジュースでお腹をちゃぽちゃぽ鳴らし、今となってはもう思いだせないような世界一くだらなくて世界一面白いお喋りを楽しんでいた。

彼女と過ごす日々は何をしても面白くて楽しくて、ほっぺたと腹筋がいつも痛かった。

彼女は社会人になってからも、太陽のような明るさで愛されていた

高校卒業後、私達はそれぞれの夢を追いかけ、彼女は看護師に、私は会社員になった。

社会人になってからも常に連絡をとり続け、月に一度は仕事の休みを合わせて遊んでいた。
コスメカウンターに行き横並びでタッチアップしてもらいお互いの顔を見合わせて「綺麗ーー!」と感激したり、マッサージ屋で同時に「痛ーー!」と絶叫したり、学生時代と変わらず楽しい時間を過ごしていた。
しかし、いつもほんの少しの罪悪感と劣等感が、私の心の中を蝕んでいた。

彼女は社会人になってからも、学生時代と同じように太陽のような明るさで皆に愛され皆を愛し、沢山の笑顔と笑い声に包まれる生活を続けていた。

一方、私は学生時代とはまるで別人のように暗くて静かで無表情な人間として、ただひたすら機械のように働き、生きるための最低限の暮らしを淡々とこなしていた。

私にはその明暗が耐え難く、罪悪感と劣等感に苛まれていたが、彼女はさほど気にしていないようで変わらずに私へ明るい愛を注いでくれた。

私が会社の帰り道に泣きながら「仕事つらいし40度の熱でフラフラするし明日の出勤が怖い」と連絡すればゲラゲラ笑いながら「休んでさっさと病院に行け」と叱ってくれ、入院中に「誰からも連絡がこないし無性に寂しい」と連絡すれば素っぴんジャージで韓国グループのダンスを全力完コピした動画をLINEで送ってくれた。

太陽を失った月を、太陽はどう思うのだろう

かつて女子らしくおしとやかにしろと怒られていた明るい私は、もう完全に消え去っていた。
私の明るさは、彼女の存在があったからこそ生まれる光だった。

太陽を失った月を、太陽はどう思うのだろう。

「昔は毎日が面白くて楽しくて仕方なかったのに、今は全く違う。私もう別人だよね。助けてもらってばかりで、ごめんね」

居酒屋でチーズタッカルビをつつきながら薄いチューハイでお腹がちゃぽちゃぽ鳴りそうな時、ついあの頃を思いだして呟いてしまった。

彼女は少し驚いた顔をして、手を叩いて笑いだした。

「何言ってんの。学生時代から何も変わってないよ。ふざけながらも、なんだかんだ誰よりも勉強も部活も全力で真面目に頑張るあなたを見てたから。いつもその真面目さに励まされるから、私も看護師として頑張り続けられるんだよ」

びっくりして、嬉しくて、つられて笑いながら涙が止まらなかった。太陽はいつだって月を照らしてくれていた。

いま日本の最前線で戦い続けている親友へ

2021年、彼女は日本を飛び立ち、新たな地で働き始める。ここ数年はずっとその為に語学勉強や資格試験など様々な準備を着々と進めていて、多忙な中でも新たな夢を叶えるために奮闘する彼女を私は羨望の眼差しで見守ってきた。
日本に戻る予定が決まっていないので、本当は今年のうちに沢山遊んで沢山旅行に行って、沢山の思い出を作ってから全力の笑顔で見送ろうと思っていたけど、何一つ出来ないまま離れる時期が来てしまった。

いま日本の最前線で戦い続けている親友へ

あなたは私の太陽です。
どうか無事に、どうか健康に、どうか晴れやかな笑顔で、あなたの夢が叶いますように。

また一緒に笑い転げる日が来ることを信じています。

いってらっしゃい。