2020年も残すところあとわずかとなり、今年を振り返ってみると、年始に立てた目標は達成できなかったものも多い。コロナウイルスは、単に人の命を奪う感染症というだけではなく、多くの人の穏やかな日常生活をうばった。私が昨年“かがみよかがみ”に投稿したエッセイでは、「イギリスにいても日本の社会問題に目を向け続けたい」という目標を書いたが、今年は、ニュースを見ると気分が落ち込むこともおおかったため、あえて見ない、読まないようにしていたこともある。そのため、この目標が達成できたとは胸を張って言えない。ただ、この一年で、目標は“何が何でも達成しなければならないもの”ではないと気づいた。むしろ、“状況に合わせて臨機応変に対応していくこと”の方が大切ではないかと感じた。

変化が激しいこの時代、小さなころから好きだった読書に助けられた

確実なもの、確かなもの、変わらないものはないのだと痛感している。変化の激しいこんなときだからこそ、私は読書に助けられた。本を読むことは小さなころから大好きで、いつも私のそばには本があったが、本や読書に救われた、と強く感じたのは、このコロナ禍であった。最高の現実逃避の手段なのだ。

私が好きな本のジャンルはミステリー、推理小説、サスペンス、警察小説などだ。秘められた何かしらの謎を、物語の中にちりばめられたヒントをもとに自分の頭で考えていく。残酷な事件が自分の身の回りで起きるのは嫌だが、小説の中と考えると不思議とよい意味で楽しめる。ひとつひとつの作品は、創造性に富んでおり、それを生み出している作家たちには、深い敬意を持たずにはいられない。

小説を書く事に挑戦するものの自信がなく、書き終えられなかった

小さなころから今までずっと本を読み、これまでに読んできた総冊数も増えてきている。私が本が好きであるということは、家族や友人をはじめ、周囲の人にも知られているため、ときどき、「あなたも何か小説を作って、書いてみたら?」と提案されることもあった。思い返せば、小学生のころから自分で想像したことを紙に書き、父や母に見せていたことがあった。そのころは発想も本当に自由で、物語を書くことが楽しくてしかたがなかったことを覚えている。また、小説や物語ではないものの、学校や塾で募集されていた作文コンクールで、私が書いた作品が入選したこともあった。

それでも、中学生や高校生になったころから、自然と“自分で考えて何かを創りだす”ことから自然と遠のいていった。本に関しては、もっぱら読むことに集中していた。また、大学生になり、日本人作家だけではなく海外の作家の作品も読み、幅広い世界に触れてからは、「自分にこんな素晴らしい作品はかけない」と思い込み、自信がなくなり、ネガティブになっていた。一つのシーンやセリフを思いつくことはあっても、それを一つの物語にして書き終えることはできていなかった。

ラジオで聞いた作家インタビューが刺激に。私の作った物語を本にしたい

しかし、あるとき、ラジオでイギリス出身のミステリー作家のインタビューを聞いた。その中で彼女が本を書くことのよろこびや、どんなふうにインスピレーションを受けて執筆するか、また、どんな環境で物語を作り出しているか、といった話をしており、刺激を受けた。インターネットで色々と調べてみると、アマチュアで小説を書いている人は、出版社が主催する小説のコンテストや新人賞などに応募することが多いという。具体的に現在募集中のコンテストのウェブページを見てみると、海外在住でも応募できるものがあることがわかった。まだまだ何も作品はできていないが、タイミングがあえば、チャレンジしてみたいと思う。私が作家たちの生み出す作品に救われたように、と大それたことは言えないが、2021年は、自分の想像力と創造力を、少しだけ試してみたいと思っている。そして、いつの日か私の作った物語が、本の形になったらいいなと思っている。