家に帰ると、私のことを可愛くないと言ってくる人がいる。
「そんな顔で生きる価値はないんだ、いっそ死んでくれないか」
と言ってくる。
部屋の中に立てられた、スタンドミラーを覗くと君はいる。
仕事中もずっとマスクをつけていてできたニキビ、人より多く目立つところにあるほくろ、つながりそうな眉毛、ボサボサになった産毛、私の顔を構成するすべてに君は嫌悪感を示す。

「ブス」「可愛くない」時がたっても私を縛る呪いの言葉

すれちがった知らない人から言われた「ブス」、好きな人から言われた「そんなに可愛くないよね」。
何気ない言葉たちに、ずっと君は縛られている。
一番の仲良しだったあの子が、クラスメートからいつも可愛いって言われていることが羨ましかった。隣にいるのに、見向きもされなかった君は、私を意味もなく責め続けた。集合写真に写る私の顔がクラスの楽しげな雰囲気を濁しているように見えた。卒業アルバムの私の写真を未だにまともに見られない。

君は本当に、私の見た目が嫌いだね。

「私は一生ブスのまま」 泣きながら、でもちゃんと前を向いた

私なんかダメだ。
何をやってもダメだ。
どうせうまくいかない。
批判されるくらいなら何もしたくない。
私は一生ブスのままだ。

君はいつも私に訴える。泣き出す君の真っ赤な顔を何度も見てきた。だけど、

知らない人にブスって言われてつらかったよね?
好きな人に可愛くないって言われて悲しかったよね?
でも君はがんばっているよね?
きれいになりたいって決意した日から、君は一歩ずつ前へ進んでいるよね。

Twitterの美容系アカウントをたくさんフォローしたり、ドラッグストアで何時間もかけてボディクリームを選んだり、ヘアミルクとヘアオイルの違いがわからなくて困ったり、今まで読んだことのなかったファッション誌を熟読したり、まつ毛サロンに通ったり、パーソナルカラー診断を受けたり。
君はすごいね。

初めて髪を染めた日はとっても緊張したね。美容外科の値段と評判が気になって眠れなくなった夜もあったよね。
小さいことしかしてないなって思ってるでしょ。大丈夫。

私が言うんだから間違いない 「きれいになったね、大好きだよ」

ちゃんと君のきれいに変わっていってるよ。

お肌、前よりすべすべになったね。ちょっと伸びた眉毛や産毛は気づいた時に剃っちゃえば案外どうってことないよ。
きれいもきたないも全部君と分かち合ってきた。君にとって嬉しいものは私も嬉しい。君にとって嫌なものは私にとっても嫌。

何がわかるって?
君のことなら誰よりもわかるよ。何でもわかるよ。一緒に生きてきたんだから。

ずっと欲しかった服を買った日も、スーツでビシッときめた日も、どんな君も私は見てきた。同じ気持ちになってきた。

今度とびきりのおしゃれをして、街を歩いてみよう。まっすぐに前を見て、胸はって歩く君を悪く言う人はいないさ。
鏡を見ないと君には会えないけど、会えた時くらい笑ってよ。
毎日頑張る君が、私は大好き。