私は、結婚して2年半になる。しかし、“ふつう”の結婚につきもの、と思われていることはほとんどしていない。結婚式を挙げることや、新婚旅行に行くこと、そして夫の苗字に変えること……。つまり、はっきり言ってしまえば、籍を入れただけ、なのだ。

自分たちに合わせた結果。人前で注目を集めることが苦手な2人

私たち夫婦が、これらの“ふつう”のことをしていないのは、自分たちの好みや性格、そして当時の状況を考えてのことだった。結婚した相手がイギリス人で、国際結婚であったこともあるかもしれないが、国際結婚は本当に状況が個人個人によって違うため、日本人同士が結婚するのと同じようにしている人たちもいる。そのため、私たちの場合は、国際結婚だからというよりは、本当に自分たちに合わせた結果だと思っている。

たとえば、結婚式を挙げなかったことについては、私と夫、お互いの家族が日本とイギリスに住んでおり、どちらの国で式を行うことになっても、家族や親せきが出席することが難しいと判断したためだ。お互いの家族に結婚式を見せたいと思ったら、日本とイギリスの2か国で2回行うことも考えられるが、私たちの性格的に、それは合わないと思った。私と夫は2人とも、人前で注目を集めることが苦手なため、そんな苦手なことを2回も行うのは、現実的ではなかったのだ。結婚式は自分たちのためではなく、お互いの家族のため、特に今まで育ててくれた両親へ感謝の気持ちを伝えるため、という意見があるのもわかる。今となっては、両親に自分のウエディングドレス姿を見せられなかったことは残念ではあるが、それでも、後悔まではしていない。

国際結婚の場合、苗字を変更するメリットはそれほど多くない

苗字については、国際結婚であることが大きい。私たち夫婦は、私がイギリスに移住する1年と少し前に、私が住んでいた地域の市役所に婚姻届けを提出する形で入籍した。今後ルールが変わる可能性は無きにしもあらず、だが、私たちが結婚した当時は、国際結婚の場合、苗字はどちらかに合わせるのではなく、お互いそのまま変わらないというのがデフォルトであった。そのため、苗字を夫と一緒にしたいと思ったら、別に申請書を提出する必要があった。私たちは、できるだけ早くイギリスに移住する計画であったため、日本で長く暮らす予定もなく、その短い時間だけのためにパスポートやその他身分証明書、銀行、その他金融機関関係、仕事関係などで自身の苗字を変える手続きをすることははばかられた。また、いろいろと調べてみると、国や国籍にもよると思うが、国際結婚の場合、苗字を変更するメリットはそれほど多くなく、子どもを持つことを考えている場合にはメリットがある、ということだった。私たち夫婦は、絶対に子どもを持ちたい、と考えているわけではなかったため、苗字を結婚と同時に変更することはしなかった。

ハネムーンに行かずとも、穏やかな日常を過ごせていて幸せ

また、それほど時間を置かず移住するということで、ハネムーンにも行かなかった。ただでさえビザ取得には高額な料金がかかり、将来何回かビザの更新も控えている。どこかに大きなお金を使って旅行するよりは、日々の生活をお金の心配をせず穏やかに過ごしたいと思ったことが大きい。

結婚式も挙げず、苗字も旧姓のまま、ハネムーンにも行かない……。周りから見たら、「それで本当に結婚したと実感するの?」「本当に幸せなの?」と思われるかもしれない。しかし、私は充分幸せだと思っている。毎日の生活には大きな不自由はないし、穏やかな日常を過ごせている。また、苗字は同じでなくても、生活のなかで夫や夫の家族からの温かい思いやりを受けて、家族になったことを感じている。もちろん、結婚式を挙げたり、純白のウエディングドレスを着たりすること、高価な婚約指輪、結婚指輪を買うこと、ハネムーンに行くこと、自身の苗字が変わること、そういうことが好きだ、あこがれる、という気持ちもわかるし、否定する気持ちはまったくない。ただ、それだけが結婚の答えではない、私の経験から、そう思うのだ。