私みたいな人間と、何かの間違いで結婚してしまうパートナーは大変かわいそうだと思う。ましてや、子供など生まれてしまった日には、その子に対して申し訳が立たない。

顔は平均以下、才能も生き甲斐もない私から生まれる子に申し訳ない

 私の顔面は平均以下だし、音楽・スポーツ・学問や何らかの才能に特に恵まれたわけでなく、生き甲斐になるようなパートナー・芸能人などにもまだ出会っていない。
 結婚した相手を絶対幸せに出来るなんて言えるわけがないし、生まれてくる子が、私より良い人生を送れる保証も出来ない。
 生まれてからの27年間をもって、それは確実に言える。

 「誰か」と結婚するということについて、考えないわけじゃない。意識するトリガーは、生活の、そこかしこにある。

 同年代の同僚の男の子は、学生の頃から付き合ってきた彼女と結婚するらしい。プロポーズはクリスマスデートのディズニーランドのディナーで。クサすぎるって、同期の皆んなで笑ってやった。彼女は嬉し泣きしてたって。いい話すぎるって、皆んなで笑った。
 もう友達の結婚の話にいちいち動揺はしない。結婚するも幸せ、結婚しないのも幸せ、っていう感覚もとっくに身につけた。けど。

結婚し出産した同級生の話を並走する電車から眺めるように聞いている

 中学の同級生の中で、一番に結婚した女の子はこの春、一番に子供を産んだ。旦那さんはアウトドア好きな個人事業者。彼女は都会育ちでインドアだから、旦那さんの趣味の釣りには私が誘っていただいた。
やっぱり自分の子供は可愛いらしい。帰宅して手を洗わずに子供に近づいたりして、奥さんによく怒られるっていう話も聞いた。愚痴めいてはいるが、やっぱり、楽しそうだ。
 結婚して子供を産んだ同級生だった彼女が、全く違う電車に乗っているのを隣を並走する電車から眺めている感覚。私は彼女の電車の行き先は何となく知っている。彼女は私が隣の電車から眺めていることを、きっと知っている。

 実家に帰ったら、妹に彼氏が出来ていた。週末ごとに、行き先も告げずに遅くまで出かけている、と母から愚痴を聞かされていたので、大方予想はしていた。実家を出てアパートを借りたい、と相談された。私の知る限り、彼女に独立した生活スキルは皆無だ。
 当然、一人暮らしすることに反対する理由を並べ立てて、延期を促したけれども、最大の理由は言わなかった。
妹がそのまま同棲、結婚するとなったいつかの為の、私の心の準備が出来ていないことだ。

 金曜日のランチ、会社の先輩の男の人は、週末、庭でBBQをする準備に頭がいっぱいだ。子供は男の子4人で、肉をたくさん買わないといけないらしい。子供たちも普段はゲームばかりで構ってくれないけど、BBQならお父さんがヒーローになれるんだと。

何者でも無い私は、将来パートナーや子供に何をしてあげられるだろう

 私の週末は何をするかな。YouTubeでみた料理動画でチャーシューが美味しそうだったから、1時間半かけて豚肉の塊を煮込もうか。煮ている間に、お気に入りのライブ動画を見る。チャーシューの煮汁は捨てずに、大根を煮物にしよう。
 午後は天気が良さそうだから、バイクの洗車をしないといけない。来週ツーリングに誘ってもらっているから、整備もしたい。夕方は、キックボクシングのジムに顔を出そうか。温泉でひたすらサウナで汗を流すのもいい。
 そういえば今週、日経平均の動きが怪しい。手持ちの株の売りタイミングも検討しないといけない。

 私はいつか何かになるだろうか。結婚するまでは、未分化でいることが許される気がしている。
もしそんなことがあるとして。いつか何かの間違いで私のパートナーになる人には、今から申し訳ない気持ちでいる。何者でも無い私は、相手に何をしてあげられるだろう。
 私の子供として生まれてくる子には、ありったけの、私は人生をサバイブしてきた術を教えてあげるから、どうか私よりも、いい人生を。