「"かわいい"ってそういう意味じゃないから」
鼻で笑って見下すようにそんな言葉を投げつけられたあの瞬間、私はとても恥ずかしい気持ちで胸がいっぱいになった。

可愛がってくれていた先輩が見せた裏の姿。慕っていたのは私だけかも

以前、勤めていた会社で入社した時から私を可愛がってくれていたはずの女性の先輩からある時、唐突に心にグサッと突き刺さるような事を言われた。
もしかしたら先輩として慕っていたのは私だけで初めから口には出さなくても馬鹿にされていたのかもしれない。思い返せば、人前でわざと私の容姿をからかうような発言や態度があった。誰もが目を引く位の整った顔立ちでとても愛想の良い先輩だったから、最初は特に気にする事もなく何気ないコミュニケーションなのだと思っていた。でも、気付いてしまった。自分にとってどうでも良い相手に対しては態度が豹変する人なのだということに。

私は正直、人よりもふくよかな体型で特別に可愛いわけでないのは自覚していて、社内でモテモテで彼氏も常に途切れた事のないその先輩のような華やかな人生を送ってきたタイプではなかった。先輩はほんとに羨ましいと思うくらいに周りからチヤホヤされていた。

「かわいいってそういう意味じゃないから」先輩からの嫌がらせ開始

だから余計に私は自分に自信なんてなかった。そんな私にもその当時、同じ職場に好きな人がいてその人と会える事や話せる事が毎日のたのしみだった。だけどある時、私の好きな人の想い人がその先輩である事を知ってしまった。
二人が仲良く話をしている姿を見る事は正直、辛かった。でも、自分の気持ちは胸に秘めておこうと私は必死に仕事に打ち込んだ。
だけど小さな事がきっかけで私の好きな人が周りにバレてしまった。それを知った先輩は、明らかに以前とは態度を変えてきた。周りにも分かるくらいのわざとらしい変わりようで、それが私に対しての嫌がらせの始まりだった。いつも愛想が良くて、困ったらアドバイスをくれたり優しかったはずの先輩は、ものすごく気分屋のように私に接するようになったのだ。
例えば、「今日の会議すごく眠たくなりますね」と言うと、それまでは同調してくれていたのに面倒くさそうに「は? ガムでも噛めば?」とか、人前で「え~! 髪型変えた~? めっちゃかわいい~!」と言われて、謙遜していると「いや、"かわいい"ってそういう意味じゃないから(笑)」という風にだ。
その頃、周りにいる先輩の取り巻きの人たちもグルになって水面下で私に対して嫌がらせをしてきた。

負けなたくない。嫌がらせの言葉は私を奮い立たせるパワーワードに

でも負けたくなかった。誰にも相談できず、辛い思いをそのままになんてしたくなくて、周りのみんなを見返してやりたいと強く思った。だから私は自分に自信をつける為、悔しい気持ちを晴らす為にダイエットを始めた。相当の努力だったと思う。食事制限に運動、それまで何をしても長続きなんてしなかった私が数ヶ月後には約18キロの減量に成功したのだから、あの時の先輩の言い放ったあの言葉は、私を奮い立たせるものすごいパワーワードだったのだろう。転職して何年か経つのに未だに忘れる事の出来ない私の人生を変えた一言だ。

ダイエットに成功してからは、周りの態度も一変した。残念な事にパワーワードを言い放った張本人は私がダイエットを終える前に退職してしまったので直接的に見返す事は出来なかったけど、自分に自信を持てた事が何よりもの財産になった。

あの時、悔しい気持ちを抱かせてくれた先輩と周りの環境があったからこそ今の私がある。
そして、その時の経験が何年経っても思い出されて何か辛い事があった時の糧になる。苦しくて悲しくて辛い出来事も意味のない事などなくて全ては今の自分に繋がっているのだと思う。だからこそ過去の自分に誇りを持ってこれからの人生も過ごしていきたい。