喧嘩したまま別れた親友。怖くて読めなかった手紙を開いたら

あの日のことを、ふと思い出す。
あの頃の自分の幼さに気づかされる。どんなに辛くても、苦しくても、もう戻れない。今でも、あの子に素直に謝っていれば、と思うことが多々ある。あの子の人生の中の1つの希望を壊してしまった。今なら言えたかもしれない「ごめんね」の一言がなぜ簡単に言い出せなかったのだろうか。
ある時から、わたしは家庭の事情により児童養護施設で過ごすようになった。その事で悩んだり、苦しんだり、悲しんだりすることもあった。
しかし、多くの人との出会いや様々な経験は、今となっては良い思い出だと思えるようになった。
それから、月日が経った。
中学生になった時、転校生がやって来た。その子もわたしのように家庭の事情で、施設に入所してきた。その子とは当然のように仲良くなった。
その頃、同じ境遇で、わたしの事を理解してくれている友人が少なく、何かある度に、その子に泣きついていた。どんな思いで聞いていたかは知らないが、わたしの心の支えになっていた事は確かだった。その子とは、「同じ高校に行きたいね~」とか「大人になっても仲良くしてね~」とか話していたし、大好きな友達ですごく信頼していた。
しかし、ある時、些細なことがきっかけで口喧嘩してしまい、それが周囲の大人を巻き込む程に大きなトラブルへ発展してしまった。
理由は、悩みを抱えているその子の気持ちを考えず、わたしが発してしまった一言だった。
結局、その子はわたしに1通の手紙を残して、施設を退所して、どこかへ引っ越していってしまった。わたしが悪いのに。その後しばらく、辛い日々を過ごしていた。
手紙は怖くて見られなかった。
それから、中学を卒業し、高校に入学した。あの子と話をしていた高校に無事合格し、通っていた。
ある時、「MY思い出BOX」をふと見返していた時だった。MY思い出BOXとは、これまで出会ってきたわたしの思い出たちを大切に保管している箱だ。
その中の1つに目が止まった。
「Dearななな」と、綺麗な文体で綴られた1通の手紙が入っていた。その時、あの頃の事を一気に思い出し、涙が急に溢れだした。手紙を開けてみると、そこには、大好きな思い出がつまっていた。
「短い間だったけどありがとう! 楽しかったよ。しゃべらなくても一緒にいるだけでなぜか落ち着くことが出来てた。はしゃいだりしてすごく楽しかった!!
よく一緒に登下校したね。ありがとう。喧嘩もしてしまったね。怒らせてごめんね。あの後すごく反省した。
まあ、いろいろ楽しく過ごせた! なななのおかげで充実した毎日だったよ!!
なななは、自分らしくいれば良いと思う。ななななら誰とでも仲良くなれるよ!
●●高校頑張って。こんなわたしと仲良くしてくれてありがとう! From ○○」
涙が終始止まらなかった。こんなに優しい気持ちでいてくれた事にはやく気づけばよかった。
ありがとう。あなたのおかげでわたしは頑張っているよ。あなたのおかげで自分がこんなにも幸せ者なんだって気づく事が出来たよ。
いつかまた会えたら、必ず言おう。
「ごめんね」と「ありがとう」と「大好き」って。
手紙は今でも大切に保管している。再会出来ることを信じて。
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