「20年間ありがとう。これからは1人で家事ができるように努力します。」

 これは私がお母さんに送った手紙の内容だ。
 今年、私は20歳になる。成人式の前撮りの日に、着付けの担当者の方から、「お母さんに手紙を書いてみない?成人式の日に家に届くようにしておくね」と言われ、便箋とペンを渡された。便箋のサイズはかなり大きく、何枚でも書いていいからね、と言われたが、私はたったの2文で、そっけないことしか書けなかった。

素直に気持ちを伝えられなかったのは恥ずかしかったから

 私は、今まで面と向かってお母さんに感謝の気持ちを伝えたことが一度もない。
 中学生や高校生の時に、行事の一環として家族に手紙を書く機会があった。しかし、直接感謝を伝えることが苦手な私は、毎回2~3行しか書けず、感謝を伝えることから避けてしまっていた。クラスメイトの子たちは、感謝の気持ちをスラスラ書いていたり、手紙を書きながら涙を流していたりする子もいて、私は素直に気持ちを伝えることが出来る人を見ると、とても羨ましくなった。
 お母さんからは、「なんでいつもこんなに短いの?もっと伝えることないの?」とムッとしながら言われるけれど、「別に書くことないし」と最悪な返事しかできず、毎回その繰り返しだった。
 でも本当は、書くことがないのではなく、恥ずかしかったり反抗したりしてしまっているだけで、今まで迷惑をかけてきたぶん、伝えたいことはたくさんあった。
 また、Twitterやインスタグラムで母の日や父の日に手料理を作ってあげて写真を載せている人を見たり、親の誕生日に感謝の気持ちをストーリーに載せていたりする人を見ると、なぜ自分にはそれができないんだろうと、劣等感と自己嫌悪にさいなまれることがある。自分にとって難しいことを、日ごろから行っている人たちが妬ましく、とても羨ましかった。

お母さんを手伝いたいのに反抗する自分が情けなかった

 そして、私は今まで拒んできたことがもう一つあり、それは家事である。
 お母さんは公務員として毎日バリバリ働いているため、家に帰っている頃にはひどく疲れている。そのため、お母さんが一人で家事をやっていると「食器洗いやっといて」「ゴミ捨て行ってきて」「洗濯物入れるの手伝って」と言われるが、手伝わないと、という気持ちがあるにもかかわらず、なぜか逆らってしまう。
 私の父も公務員として働いているが、数年前に体調を崩してしまい、そこから一切家事を手伝わなくなってしまった。そして弟は、中学生で反抗期真っ只中であり、「うるさい」が口癖になっている。そんな中、お母さんが一人で家事をするという状況が続き、「なんで手伝ってって、いちいちお願いしないといけないの?奴隷じゃないんだよ」と怒りが爆発してしまうこともあった。
 私は「○○やって」と言われると、なぜか反抗してしまい、頭では手伝いたいと思っているのに、身体が動かない自分が本当に情けなく思う。

今まで一度も伝えられなかった気持ちを、あの手紙とともに

 だから、2021年は素直になって、今まで一度も伝えられなかった感謝の気持ちをすべて吐き出して、お母さんがもっと自分のことに時間を使えるようにすることが目標だ。前撮りの時に書いた手紙は成人式の日に届くけれど、その時に勇気を振り絞って感謝の気持ちを伝えたいと思う。

お母さんへ
 今まで感謝の気持ちを素直に言えなくてごめんね。
 手紙を書く機会は今まで何回かあったけれど、毎回一言しか書かなかったのは、書くことがなかったからじゃなくて照れ臭かったからです。
 お母さんは私のために朝から晩まで必死に働いて、朝4時半に起きてお弁当を3つも作って、家族を支えてくれてありがとう。そのおかげでいい高校にも行けて、今は大学で質の高い授業を受けることが出来ています。
 お母さんは家族のために心も身体も削って仕事に家事に育児に、負担が相当大きかったと思うし、なかなか休ませてあげられなくて本当にごめんなさい。自分のことよりも常に家族のことを優先してくれたお母さんには感謝してもしきれません。
 今までも、これからもお母さんのこと一番尊敬しているし、お母さんのような大人になれるように努力します。
 産んでくれてありがとう。