桜の咲く季節、私は憧れの地東京で、 ツアーコンダクターになりたいという思いを胸に、旅行の専門学校に入った。
前の席の女の子、名前はちほたん。彼女は可愛くていつも優しい女の子だった。当然の如く、私たちは仲良くなった。ちほたんも含めた女子4人で毎日お昼を食べたり、帰りも一緒に帰ったりして楽しい毎日を過ごした。

季節は春から夏、夏から秋になり、グループの中の2人はクラスの男子と付き合う事になった。2人は彼氏に夢中で、私たちとの会話も内容は彼氏の話がほとんどになっていた。ちほたんにも彼氏がいるが、他の大学に通っているためあまり話には入らず、私は同じクラスの男の子に片想い中で、一人だけ彼氏がいなかった。
毎日のように遊んでたけど、日に日に私は片想いが苦しくなるのと、二人の惚気話に心が耐えられなくなって学校が嫌になっていった。これは私の単なるわがままである。でもちほたんはそんな私の思いを感じ取ってくれて、励ましてくれたり一緒にたわいもない話をいつもしてくれた。おかげで私は学校も休まず行けていた。

私は彼への恋が実って有頂天。ちほたんは学校を休みがちになった

季節は秋から冬に変わり、
私にも彼氏ができた。片想い中だったクラスメイトから告白されたのだ。
有頂天の私は彼に夢中になってしまい、毎日彼の話題をするようになった。ちほたんといる時も、女子4人でいるときも。ちほたんを除いた3人はクラスメイトの彼の話で毎日盛り上がっていた。私はまだちほたんの苦しみに気付いていない。
そして半年が経ち、2年生の夏になっても私たちはまだ彼と続いている。ちほたんがだんだん学校を休むようになったのだ。理由は喘息と聞いている。
ちほたんは元々喘息持ちだったのでみんな疑うこともなかった。

就職をする時期になり、私も無事希望のところへ内定を貰えた。そんな中、ちほたんは内定を辞退したと先生から報告を受けた。

「妊娠したんだ」。久しぶりに会ったちほたんはそう言った

本人から理由を聞きたくて、久しぶりに女子4人で集まった。
ちほたんは「私、妊娠したんだ。」と言った。
私は驚いたことよりも、気づいてあげれなかった事に自分を強く恨んだ。私だけでなくちほたんも上京してきていて、一人心細い中お腹の中で小さな命を育てていたのだ。
この時のちほたんの思いを想像すると、どれだけ不安だったかとか、そして自分のことしか考えられずにいた私が嫌いになった。

その当時はごめんねの言葉を言えずにいた。
私たちは無事卒業し、それぞれの就職先、ちほたんは子育ての毎日で忙しい日々を過ごしていた。
それから数年後、わたしにも子供ができた。当時23歳。
自分が妊娠し、ちほたんの立ち場が痛いほどわかった。20歳で子供を産む事、周りの子よりも遊べない事や我慢する事、自業自得と言われる事、若くして子供を授かることは、23歳で産んだわたしよりも何十倍も苦労したと思う。周囲からも散々言われたと思う。

でも、ちほたんは全てを受け入れていた。後悔もしていなかった。誰よりも心が優しかったからだ。

数年越しの「ごめんね」と「ありがとう」がいっぺんに出てきた

そんなちほたんに私は初めて心から謝れることができたのだ。
「あの時ちほたんの寂しさに気がついてあげれなくてごめんね。」
「つわりの大変さに気がついてあげれなくてごめんね。」
「そばにいてあげれなくてごめんね。」
「たくさん話聞いてみるてあげれなくでごめんね。」

でもそれと同時に感謝の言葉もでてきたのだ。
「私が辛い時一緒にいてくれてありがとう。」
「たくさん話聞いてくれてありがとう。」
「彼氏で頭の中いっぱいになっちゃう私を見捨てないでくれて、今も友達でいてくれてありがとう」と。
ちほたんは、
「あたりまえや!」
「これからもよろしくね!」
と言ってくれた。

謝りたい人がいた。大好きなちほたんだ。彼女はとても優しい。ごめんね、ちほたん。
人生はこれからも長いからこそ、私はこれからはずっとちほたんを大切にするからね。気づかせてくれてありがとう。
大好きだよ、ちほたん。