大学1年の秋、高1から付き合っていた彼氏をふった。
理由はなんてことない。彼は私の初めてだったから、他の人も味わってみたくなっただけ。結婚願望など、はなから無かった。結婚と聞くと、誰かに属するようなイメージがあった。誰かに属して自由を奪われるくらいなら、自分一人でやりたいことをやって、誰にも揶揄されず、自由に生きていきたかった。

好意を寄せて来ない人を追う「楽しい一夜」の出口

フリーになったら自然と周りからの誘いも増えて、セフレは簡単にできた。そのうち少しでも時間があれば、面白そうな人を探して友達と夜の街を歩いた。まるで狩りを楽しむみたいに。

気づけば彼氏のつくり方を忘れていた。色々な駆け引きをする前に、すぐベッドへと堕ちてしまう。でもその方が手っ取り早く満たされるし、面倒なその後のやり取りもない。好意を寄せてくる人がいない訳ではなかったけれど、私は寧ろ、好意を寄せて来ない人を追って、「楽しい一夜」を重ねていった。

社会人になった。良い関係だったセフレ達が、なんとなく離れていった。いつも狩りに出かけた友達とは休日が合わなくなり、退屈な日々を送っていた。
彼と出会ったのはそんな折、会社の先輩に誘われて行った合コンでだった。期待してなさすぎて私は少し遅刻した。そんな私の向かいに座っていたのが彼だった。甘めのルックスと清潔感、話しやすい雰囲気…チャラそう。それが第一印象だった。

でも話してみると思いのほか気が合って、翌日映画に行く約束をした。
お昼頃に車で迎えに来てくれて、カフェで軽くブランチをした後に、流行りの映画を見た。なにこれ、普通のデートみたい。(喜) ホテルに行かずに平和に別れ、今日はありがとうのメールをした。久しぶりのふわふわとした期待、またこんな気持ちになれるなんて。

仏はセフレ時代の話を興味深く聞き、そこで私が気づいたこと

お互い好意丸出しだった私たちが付き合うまでに、時間はかからなかった。
私たちは、彼の車で時間が許す限り色々な所へと出かけた。車の中特有の話しやすさからなのか、私はつい口にした。

「私、学生時代けっこう遊んでたんだよね。普通にセフレとか、何人かいた。」
「え!まじ!?そんな風に見えないね。でもその人達との出会いもあってこそ今のlilyだから、その人達にも感謝しないとね。」
(…仏か?)

付き合ってから分かったのだが、彼はチャラそうに見えて、実は全然チャラくなかった。セックスも普通、いや、ちょっと下手かな?くらい。

青春時代を大好きな車に捧げてきたらしい彼は、自分がそういう遊びをしてこなかったからと、私の遊んでいた時代に興味を持った。

聞かれて話す私もどうかと思うけど、彼も彼ですごく変わっていると思う。普通ならそこで幻滅したりするんだろうけど、彼は本当にドラマか映画でも見てるみたいに、面白がって私の武勇伝を聞いてきた。話すことを全て話すと、私の心がふっと軽くなったのを感じた。その時初めて、私自身が自分の過去に後ろめたさを感じていたんだと気付いた。

後から、あの時本当はどう思ってたのと聞いた日があった。そりゃあショックもあったけど、その時にはもう好きだったからしょうがない、というのが彼の答え。否定も肯定もしない、現実的でありながら、どこか愛を感じる回答が、彼らしくて笑えた。

遊んでいたからこそ彼と会えたからこそ、結婚を素直に受け止められた

それから月日は流れ、1年弱が経った日、「結婚してください。」薔薇のブリザードフラワーを手に、はにかんだ笑顔で彼は言った。私はもちろんYES。彼以外には考えられなかった。

結婚って、こんなにあっさり出来るものなんだ。
いや、あっさりと決めてくれる人だったから、結婚できたのかもしれない。誰かに属するとか、一緒になるとか、昔思い描いていた結婚とは違う、ただ私を認めて好きでいてくれる人と、共に暮らすために。

ずっと遊んでいたら出会わなかったであろう彼と、それまで遊んでたきたからこそ、結婚を決意できた話。自分を自然とさらけ出せること、私にとってはそれが一番の決め手だった。