婚約をして、間もなく1年。
プロポーズをされたらすぐに結婚式の準備にとりかかり、入籍をしたらすぐ、同じ家に住むのだと思っていた。それが理想だった。だけど、私たちの場合はそう簡単でもなかった。

国際恋愛を経て結婚へ。だけど…

アメリカ人の彼と、日本人の私。彼と付き合ってきた3年弱の間で、私たちは幾度も遠距離恋愛を乗り越えてきた。
出会ったのは、彼が日本に留学していたころ。私には当時彼氏がいて、アメリカ人の彼はただのクラスメイトにすぎなかった。彼も彼で、日本人の彼女がいて、幸せそうにしていたのを覚えている。彼がアメリカに帰った後、私はアメリカに留学をしたのだが、そこで私たちは再会した。
彼の実家は私の学校のある州の隣で、車で1時間半の距離だった。最初は知り合い程度 の存在だったが、いつしか私たちの距離は近くなり、毎週末会うようになっていた。
彼は、元々日本に移住をするのを夢見ており、私たちは私の留学が終わるタイミングで一緒に日本に帰ることを決意した。その時点で私たちは、婚約はしてないものの、結婚を意識するようになっていた。
日本語を不自由なく話し、読み書きができる彼にとって、日本での就職はさほど難しいものではないということは、お互いが感じていた。就労ビザだと彼には多くの規制がかかるため、私たちは先に入籍をして、配偶者ビザを取得し、それから仕事を見つけようと合意した。一方、私の就職先は大手で日本全国に拠点があり、勤務先は未定だった。

まさかの国内遠距離、思い描いていた結婚と同棲へのギャップと誓い

いざ帰国して、その旨を私の両親に話したところ、私たちは猛反対をされた。両親と彼は何度か会ったこともあり、彼には好感をもっていた。しかし、結婚してから仕事を探すというアイデアに、どうしても親は納得しなかったのだ。しぶしぶ彼は、彼のビザスポンサーになってくれる会社を探し、面接をして、ビザと仕事を手に入れた。しかし、彼の勤め先は北海道。ようやく発表された私の勤務先は山梨だった。

帰国をしてすぐ、彼からプロポーズをされていた。そして、私はそのプロポーズを迷うことなく受けたのだった。まさか、日本に帰って来てからまた遠距離をすることになるとは思っていなかった。
別々の生活が始まって、半年がたったころ、私には奇遇にも北海道転勤の話が巡ってきた。彼のそばに少しでも近づけると思い、私は北海道に越した。
それでも私たちの距離は車で片道1時間半。お互いの通勤が叶う場所はというと小さな集落しかなく、アパートなどはまるでない。せっかく一緒になれると思ったのに、幸せな結婚生活を始められると思ったのに、仕事と場所が邪魔をする。就労ビザに縛られる彼にはまだ、今の会社を辞めるのは早すぎて、私もせっかく入った大手企業を諦めてしまうには早すぎる。

私にとって、結婚はものすごく近く、それでいて遠い存在だ。私の薬指にはキラキラと輝く婚約指輪がはめられているのに、入籍ができない。一緒に暮らせない。
それでも、籍だけは入れようかと、別居婚の話が上がってきたのはつい最近。結婚とは何なのかもはやもう分からない。分かっているのは、お互いを想う気持ち。絶対の愛。一体いつになったら同じ屋根の下、暮らせる日が来るのか分からないけれど、私たちなら大丈夫。だって、共に生きるとお互いに、この婚約指輪に誓ったのだから。