結婚したいと思ったことはなかった。そんな私が結婚することになった。社会人になってできた恋人と付き合いはじめて約2年、同棲して約1年。前職での社内恋愛だったため、共通の先輩方や同期から「そろそろ結婚?」とひやかされて意識していないわけではなかった。ただ、実際に籍をいれようと言われて素直にいいよと答えた自分に、自分で驚いた。

結婚するメリットよりも、デメリットのほうが多い気がした

結婚したいと思ったことはなかった。結婚、すなわち入籍するメリットがよくわからなかった上に、デメリットばかりを目にしてきたからだ。

入籍するメリットを考えたい。ひとつに、配偶者控除・扶養者控除といった税金の軽減が挙げられる。「103万円の壁」や「130万円の壁」と言われるものだ。いくつか条件はあるが、優遇を受けると受けないとでは世帯主の手取り金額に大きな差が生まれる。しかし、彼も私もフルタイムで働いている現状では活用するイメージはわかない。

入籍しないデメリットはどうだろう。妊娠・出産を見据えた場合に、事実婚だと子どもの認知の手続きが必要になるそうだ。認知なしには父親は法的に親子と認められず、親権も原則は母親側となり、子どもは父親からの扶養・相続が受けられないことになってしまう。また、出産に限ったことではないが、病院での手術同意・面会も制限される場合がある。ただ、妊娠・出産を望んでいない私たちには、今のところ自分ゴト化しづらいデメリットだ。

それでは、入籍するデメリットはどうか。SNSなどで目にする機会が多い、姓が変わることにともなう変更手続きの数々に頭を抱える女性の先輩たちの声。コロナ禍での特別給付金支給の際に、世帯主が配偶者に給付金を渡さない事象を知った。また、なんらかの事情で戸籍はそのままだがパートナーが離れて暮らしている場合もそうだ。

旧姓を通称とすることはできても、マスタの管理システムが個人単位ではなく戸籍で管理しているのだから、どうしても弊害は生まれてしまう。

両親のおかげで、「結婚」を押し付けられることもなかった

いつかは結婚しなくてはいけない、と思ったこともなかった。こればかりは両親に感謝したい。「孫の顔が見たい」や「いい人はいないのか」などと一度も言われてこなかった。祖父母や他の親類からは言われたこともあったが、そのたびにフォローしてくれた。「子どもが生まれたらいくらでも手伝うけど、生まなくてもいい。結婚だってしなくてもいいし、何回もしたっていい。元気でいてくれたらなんでもいいよ」。自分の子どもに面と向かってこう言える両親を尊敬しているし、彼らの年代を考慮しても感覚のアップデートの早さには驚いている。

そしてすこしずつ、同世代でも同じ考え方をオープンにする人が増えているように思う。もちろん、早く結婚したい人もいれば、結婚したくない人、どちらでもいい人もいる。どんな考え方でもいい。誰も間違っていない。相手に押し付けなければいいだけだ。「早く結婚したほうがいい」や「子どもはいたほうがいい」と押し付けられる機会は、幸い想像よりすくない。

“私にとっての”結婚のメリット・デメリットって?


話を戻して……結婚したいと思ったことがなかった私は、結婚する。事実婚ではなく、法律婚だ。選択の余地なく、夫婦同姓だ。

さて、私にとっての入籍のメリット・デメリットは?意外にもメリットはあった。なんと、恋人が喜んでくれる。入籍しようなんて大告白だ。それに対してイエスと答えると、なんと、恋人が喜んでくれるのだ。私は彼と付き合うなかで精神的に安定し、自信を身に着けられたと、大いに恩を感じている。恩人が喜んでくれるならいっか、と考えた。

そして、義理の親族との新しい関係が生まれたからといって、これまで育んできた関係が消えてなくなるわけではない。デメリットは先述したものが多少あるが、きっと友人はこれからも変わらず旧姓をもじったあだ名で呼んでくれるだろう。私の母がそう呼ばれていたように。
結婚したくなければしなくていい、結婚してみてだめならやめればいい、何回したっていい。自分にとって居心地のいい、幸せな日々を送れるのなら。