旦那が仕事帰りに、シュークリーム4つと、フォンダンショコラ2つを買ってきてくれた。 シュークリームは私が大好きなイチゴ味。夕食の後、息子達と夫婦で1つずつ食べた。美味しかった。 だから問題があったのは、フォンダンショコラの方。

私の旦那は、レンジやトースターを使いたがらない男なのである。

喧嘩に至るリスクと、一生続くかもしれないやりとり

最終的には、彼が温めた。しかしそれまでが非常に長い。例えば、息子達を寝かしつけた後、夫婦で見始めたドラマがクライマックスを迎えて、綾瀬はるかと高橋一生が入れ替わってしまう程に。

「いくらちゃんやってよ、お願い」「自分でやりなよ~」「いくらちゃんが温めたやつが食べたいのに」「簡単だからやってみなよ~」

……私がやれば一瞬だ。でも、もしも。今後の旦那に「レンジやトースターを自力で使う習慣」が付いたとしたら? ……私達夫婦はこの無意味なやり取りを、死ぬまで回避できるのである。

喧嘩に至るリスクと、死ぬまで続く(かもしれない)リターン。そしてそこに生じる葛藤……。一生を添い遂げる前提で、2人の目の前に今、山がある。ならば私は登るまでッ!

……何て不毛な山なんだ。

私の旦那は優しい。そして忘れっぽくて、甘えん坊

フォンダンショコラに関する前提を確認するけれど(大袈裟)、買ってきてくれた人は旦那、そして今食べたいのも旦那だ(私は翌日美味しく頂いた)。

また、レンジのどのボタンを押せばいいのか、毎回忘れてしまうのも旦那。そして、トースターで短時間温める際の手順を、毎回忘れてしまうのも旦那なのである。

……旦那、旦那、旦那。私の旦那は優しい。そして忘れっぽくて、甘えん坊だ。

私は以前、「味噌汁を作りたがらない嫁(私)」についての文章を書いた。その中にもある通り、私の旦那はレトルト食品を自分で調理(?)することが好きではない。

私はそれよりも以前、「旦那の皿を下げたがらない嫁(私)」についての文章も書いた。その中にもある通り、私の旦那は皿を自分で下げることも好きではない。

衣替えについても、部屋の片付けについても書いた(書きすぎ)。私の旦那は自分が好きじゃない動作を、一旦私にパスしがちだ。そして私はその頼みを、一旦蹴りがちなのである。……なんだこの夫婦。2人でサッカーでもしてんのか?

しっかり者の長女として育った私。「これでいいのか」と悩むことも

私は散々旦那のことを「かがみよかがみ」で書いてきた。しかしこれらは全て、書き手が嫁の「いくら」による文章であって、私の言い分でしかない。

私は幼い頃から人に頼るのが得意ではなかった。しっかり者の長女として、私を育ててくれた両親には感謝している。しかし、中々甘えられない性格には若干の生きづらさがあるし、私は時々パンクする。周りに迷惑もかけている。私は甘えベタなのだ。

その反面。甘え上手な旦那との生活は、未だに目から鱗がボロボロと零れ落ちる日々。こんなにも純粋な心を持った男性を育ててくれた義両親には感謝している。しかしそれ故にお義母さんと私は、今でも旦那の愚痴を言い合う仲となっている。因果応報、複雑な気持ちにもなる。

「フォンダンショコラを温めて」というパスを、私は一旦蹴り返す

私は旦那に変わって欲しいと思っているから、旦那のパスを一旦蹴り返す。私が旦那に希望するのは、「成長」ではなく「路線変更」である。そして願うのは、旦那のプロフィール欄にこんな1文を追加すること。

「普段は甘えん坊。しかし嫁の頼みには甘い」

という1文を。

「いくらちゃん、フォンダンショコラを温めて」……? 私はアレクサでもないし、Pepper君でもないんだけれど? 嫁は便利家電ではないし、あなたは独身貴族ではないんだけれど?

……我、嫁ぞ? あなたの愛する、かわいい嫁ぞ? 嫁は今、高橋一生(綾瀬はるか)に夢中ぞ???

だから私は、旦那に言うのだ。「自分でやりなよ~」と。

まあ恐らくは、旦那としても、「我、旦那ぞ?」って思って、私に頼んでいるんだろうな。……甘えん坊の気持ちが今、ちょっとわかった。

手のひらで転がして私を甘やかす。そんな「路線変更」を希望している

先日、私が旦那に「私、本当は片付けるの好きじゃないんだよね」と言った時。彼は「知らなかった!」と言ってびっくりしていた。私が甘えベタなばっかりに、旦那は私の抱える強がりや、見栄っぱりな部分、結婚生活に抱く理想に、全く気が付いていなかったのだ(私もびっくりした……)。

結婚してから6年経つ。私は上手な甘え方が、まだまだよくわからない。しかし少しずつ、旦那に甘え始めている。私は旦那に甘やかして欲しいのだと思う。

私は目の前に山があれば登ってしまう、価値観を擦り合わせたくて仕方がない女だ。どうしようもなくスポ根な嫁だ。だから旦那にはこっそりと、そんな私を手のひらで転がして、陰ながら甘やかして欲しい。そういう「路線」でお願いしたい。これは高望みなのだろうか。
 
そもそも。甘えん坊の魅力を私に教えてしまったのも、旦那だからね……?? 旦那にはこれから一生掛けて、その責任をとってもらうつもりだ(威圧)。そういう訳でこの先も、私は旦那と仲良くサッカーを続ける所存である。お覚悟!!

旦那がフォンダンショコラを自分で温める日は来るだろうか

美味しそうにシュークリームを頬張る、年相応に甘えん坊な6歳の長男を見て、旦那は笑う。「僕そっくりやん」と。確かに旦那と長男は顔がそっくりだ。最近中身も似てきた気がする……。

将来息子が家庭を築くならば、どんな旦那になるのかな?この子が未来のパートナーを、決してPepper君扱いしませんように。

そして50年後、60年後の私達は、一体どんな夫婦になっているのだろう。……相変わらず甘えん坊のお爺さんとしっかり者のお婆さんが、フォンダンショコラを前にして、「嫁ぞ?」「旦那ぞ?」と言いながら、ボールを蹴り合っているだけなのかもしれない。

……まぁ、それでもいいんだけどね。愛していれば。