きっかけは、「ツマ」「ムコ」と呼び合うほのぼのとした夫婦の形

あなたは誰かに配偶者の話をする時に何と呼びますか?
私は「嫁」「旦那」と呼ぶより「妻」「夫」と呼び合いたい。まだ結婚の予定など何もない私の、ちっぽけなこだわりだ。

きっかけは高校を卒業して、大学に入学する直前の春休みに読んだ西加奈子さんの『きいろいゾウ』という本。一組の夫婦が登場し、お互いを「ツマ」「ムコ」と呼んでいる。

それはいわゆる一般的に役割を指す「妻」「婿」という呼び名ではなく、その夫婦の名前が無辜歩(むこあゆむ、通称ムコ)と妻利愛子(つまりあいこ、通称ツマ)という名前だからそう呼んでいるのだ。

初めてこの作品を読んだ時、その設定が凄く新鮮で面白いと思った。そして何よりその夫婦が「ツマ」「ムコ、ムコさん」と呼び合うのが優しさと尊敬に満ち、ほのぼのとしていて「こんな夫婦関係良いなあ」と思った。

「嫁」「旦那」は大抵、威圧的なニュアンスで使われていた

この本に会うまでの私は「うちの嫁は」「うちの旦那がねぇ」と言った具合に、配偶者の呼び名といえば圧倒的に「嫁」「旦那」を多く耳にしてきた。主に両親間、同級生の母親同士、ご近所さん同士の会話の中である。

私は「嫁」「旦那」という言葉にどこか威圧感を感じていた。大抵のそういった会話の中で繰り広げられるのが愚痴、悪口、文句だったから。父が母に夕食の味付けや盛り付けについて文句を言った後、決まって言うのが「そんな嫁を貰った覚えは無いぞ」。母が朝っぱらから大声で電話越しに同級生の母親とママ友トークを繰り広げる時に必ず入る「ま~たうちの旦那がねぇ、こうこうこうで…」というフレーズ。

そういう場面に出くわした時、私は部屋に戻り本か携帯を持って布団に潜る。そして自分の世界に入って外界をシャットダウンした。そうでもしていなければ、狭い我が家では耐え切れなかった。

同級生が何気なく使った「嫁」という言葉に衝撃を受けた

大学卒業後、ぽつぽつと同級生が結婚していった。最後に部活の同期の皆で集まったのはコロナ前の2019年12月末。忘年会の席で、同期の中でも早く結婚した二人に「結婚生活とは?」とあれこれ質問が投げかけられる。(ちなみに、それぞれ相手がいて部内恋愛ではない)そのうち一人が質問に答える。「うちは俺も、嫁も財布それぞれ別だから…」

どんな質問に対して、彼がどんな答えを言ったか細かくは覚えていない。ただ彼の前の席に座っていた私は、「嫁」という言葉を彼が平然と使った事に驚きを隠せなかった。

こうやって私たちの世代もまた親の世代と同じ事を繰り返すのか。私はそうなりたくない。彼の「嫁」がどんな子か知らないけど、私は将来の「夫」となる人に私の事を外でそうは呼ばせない。私も「夫」となる人の事を間違っても「うちの旦那は」なんて言わない。ちっぽけな決心をした。

意見がぶつかる時にも、「夫」「妻」として冷静に向き合えたら

『きいろいゾウ』の中では「ツマ」と「ムコ」だったが、実際には「妻」「夫」と呼びたい。「婿」という言葉も結婚相手の家の籍に入るから「嫁」と同じような束縛を感じてしまうのが正直な気持ちだ。

そして私はまだ独身で結婚の予定など何もない身だから、結婚生活は想像するしかない。既に結婚している人から見たら甘い考えだと思われるかもしれない。当然いつも夫婦円満な訳ではなく、お互い意見がぶつかる時も多々あるだろう。

しかし、そんな時こそ私の両親のように愚痴、悪口、文句を相手や他人に垂れ流すのではなく、理性を保って冷静に向き合って話し合いたい。他人に相談するにしても「うちの旦那がさぁ~」とは言わず、「夫が実はこうこうで…」と落ち着いて言うようにしたい。

「私の夫です」「僕の妻です」そんな言葉がお互いの口から自然と出るような、優しさと尊敬に満ちた夫婦関係を結びたい。