人生初めての彼氏は、2つ上の大学生だった。19歳の私にとって、大学生の紳士で優しい大人に見えた彼は、私にだけ優しくて、熱中できる世界をもっている独特な人だった。

女友達が多くて、よく飲みに行っては記憶を無くしていたけど彼の実家に、挨拶まで済ませていた私にとっては、ほんの些細な事、という認識でしかなかった。それに、性欲が極端に無かったこともあり、浮気の心配もゼロ。優良物件だ。とさえ感じていたように思う

そんな彼との半同棲生活は、幸せの極みで、ご飯を作ってくれたり、掃除、洗濯もしてくれたり、「もし、二人の子供が障害をもって生まれてきたら」という彼の大学の課題に、夜な夜な付き合い語り合うこともしばしば。この人と結婚するのだろうなあって、安心したのも、束の間。なんとその年の、11月。
短期留学中の私は、振られてしまう。

彼が好きだから、支えたいから我慢していたけど、もう誤魔化せない

原因は、私が自分自身を誤魔化しきれなかったから。パイロットになりたいんだ、と豪語していた彼は、日本で就活を頑張っていると思っていたこともあり私は寂しくても、お誕生日プレゼント送る詐欺されても、黙っていた。
「就活は大変だと先輩から聞いていたし。私が我慢しよう。支えてあげられるように強くなろう」と寂しさを宥め日々を忙しくさせて、考えないようにしていた。あと、数ヶ月で会えると信じて。でも、ある日、ふと、流れてきた彼のストーリーを覗くと女の先輩とサシ飲みして、楽しそうにいちゃついている動画が。「まあ、たまの息抜きも大切よね」そう、誤魔化したものの、彼からのLINEの返信も滞っていた私は不安になり、友達に愚痴ってしまったのが彼の運の尽き「ほぼ毎日飲み明かしているよ。先輩たちと」と聞いた私は、すごく悲しくなった。悲しくて、信じていた気持ちを踏みにじられた、と罵りたい衝動に駆られ、辞めた。 その代わり、彼にこう送る事にした。「忙しいは、私を疎かにしてもいい理由にはならないよ」

これが当時の、精一杯だった。確かに、忙しいかもしれない、私とのことも考えたくなかったのかもしれない。だけど、誰も知らない地で一人で生活していた私の限界はとっくに超えていて彼からの思いやりを感じられなかった私は、彼への思いやりをもてなくなっていた。

「別れよう」。その一言が胸を切り裂き、心も体も窒息するほど苦しい

数時間後、傲慢だったかなと不安になり、信頼できる先輩に相談すると、「-ちゃんは、他の若い世代の子と違って自分が本当に大切にされていない、っていう事実がわかってしまうからね。それに、伝えた言葉は心の声なのだから伝えて正解」と認めてもらえて安心しつつ、彼からの通知を確認し返信を確認すると、「別れよう」。
その瞬間、頭が真っ白になった。

その一言が、一瞬にして私の胸を切り裂き、止まることのない涙が頬をつたい、私の心も体も窒息しそうなほど苦しかった。息もままならない。そう思うと同時に、彼との思い出が、走馬灯のように過ぎり、私の手を掠めてゆく。
戻らない過去がどうしようもなく愛おしくも思えた。携帯の画面を見つめながら、呆然としていると、ソファで眠っていたルームメイトに声をかけられる。
「大丈夫?」
「彼に振られたの。人生の終わりよ」
口にすると、一気に現実味を帯びた言葉に圧倒される。

私、彼と別れたんだ。ポツリとつぶやくも、その意味がわかる人は誰もいない。

声が聞きたい、安心したい。でも、そう思わせてくれる彼の言葉は望めない。
でも、と真っ先に思いついた親友の携帯に電話をかけながら、足早に部屋を出た。

黙って話を聞いてくれた親友、信頼する先輩のメッセージに救われる

親友は、黙って全て私の話を聞いてくれた。彼のことも、私のことも否定せず、頷くだけの会話に私がどれだけ救われたことか。
一生、彼女を大切にしようと思った。

数時間の電話を終わらせ、ふと先輩とのトーク画面を開くと、先ほどとは違う意味で、胸が熱くなる。そこには、

「誰がいてもいなくても、-ちゃんの人生は続いていくのよ。
 私の可愛い貴方を振る男なんて、自分から捨ててやったと思いなさい。
 貴方は、価値のある素敵な女性よ。幸せになる権利があるのよ。」

とだけ書かれていた。

「誰がいてもいなくても、私の人生は続いていく。」

呟くと、なんだか心が楽になった。
まだ痛む、胸のあたりを手で覆い、画面に文字を打ち込む。

「本気なの?」
「ごめん。もう幸せにできる自信がない。」
「いやだ。」そう、打って、消しては、打ち直す。
「わかった。今までありがとう。就活頑張ってね。」

彼に縋りたくなかったし、日本に帰ってからどうにかすると決めた。
向き合ってくれないことは、もう知っていたから。

恋からすっかり覚めて独り身を謳歌なう。人生ってよくできている

その後、私は日本に帰国。
彼と連絡を取り合うも、彼が飲み会の席でほら吹きしている事を聞いたり「タバコ事件」(簡単に言うと、酔っ払った彼に近づいてきた女性の顔に彼がタバコを軽く当てたという事件)が立て続けに起きたことで、すっかり覚めたわたしは、独り身を謳歌なう。

そして、深く実感したのは、人生ってよくできているなということ。
だって、あの時は彼と別れたこと、すごく後悔していたけど、今は別れられてよかった。とすら思える。あのまま、結婚していたら、タバコ事件の被害者は、私だったかもしれない、なんて、笑えないし、軽くホラーですらある。

ふられたことに、傷心して、何もしたくない人は、しなくていい。
いっぱい泣いて、彼のこと思い出してもいい。
弱音を吐いて、たまには「生きたくない」って言ってもいい。

この世には、たくさん制約がありすぎて、悲しむことさえ悪いことみたいになっているけど少しの期間なら、私は悲しむべきだと思う。

いっぱい悲しんで、お腹いっぱい食べて、好きな人と笑うこと。
それができれば、また良いことが必ずあるから。大丈夫だから。

「誰がいてもいなくても、貴方の人生はつづいていく。」

どうか、この言葉が、私の時みたいに、誰かの沈んだ心に明かりを灯せますように。