わたしには、一生忘れられないであろう事がある。恋が叶い、大好きな人と結ばれた瞬間だ。
ひとつ上の男子の転校生がやって来るらしい。わたしは胸を躍らせた
わたしは、幼い頃から、恋だの愛だのというものにひどく憧れていた。しかし、幼いわたしになにもできることはなく、少女漫画をただ、読み耽ってばかりいた。どんなに辛いことがあったとしても、キラキラした物語の世界は、わたしの心を充実させてくれていた。現実では、クラスメイトの男子のガキ加減に心底呆れていた。
ある時、全校集会があり、学校の全員が集められた。なぜか、みんな理由を知っていたため、聞いてみるとどうやら転校生が来るという話だった。わたしの通っていた学校は、田舎のあまり人数も多くない学校だったため、転校生が来る度に全校集会が開かれていた。
情報によると、その日はどうやら、ひとつ上の男子生徒がやって来るとのことだった。わたしは、どんな人が来るのか、胸を躍らせていた。
ふと、小さなざわめきが起こった。階段を上る彼の姿にはなんだか見覚えがあった。それは、引っ越していった幼なじみだった。わたしは心臓がはねあがりそうだった。幼い頃に好きだった人だからだ。
呆気なく彼をまた好きになり、昔のように仲良くなり、付き合った
わたしは、彼とケンカ別れしていたので、連絡をとっておらず、あまりにも久しぶりだった。わたしは他人のふりをしていたが、彼は当たり前のように普通に接してくれた。わたしも単純な事に、呆気なく彼をまた好きになってしまった。
そして、徐々に昔のように仲良くなった。あるとき告白され、付き合うことになった。とても嬉しくて仕方がなかった。だが、しばらくたって、わたしは彼との別れを選んだ。理由は、わたしの嫉妬によるもので、このままでは互いが互いに自分たちの事を嫌いになりそうだったからというものだった。
わたしは、彼との思い出を消せずにいたが、別々の道を選び、彼には新しい彼女ができた。とてもかわいい彼女だった。しかし、すぐに別れてしまったという話を聞いて、わたしは、複雑な気持ちだった。
あわよくば、ヨリを戻せなくてもまた仲良くできたら...というわたしの願いも虚しく彼と音信不通になってしまった。探すあてもなく、また連絡が来ることを願っていた。ある夜、彼が夢に出てきた。彼はわたしになにか言っていたが、わからなかった。次の日、わたしは友達に彼の名前を口にされたときはとても驚いた。次の言葉を聞いた瞬間、わたしは立ち竦んでしまった。
彼は、この世を去ってしまった。
ふとわたしは、なぜ彼を好きになったのかを考えていた
理由は言えないが、とても辛かった。しばらくは立ち直れなかった。
そんなとき、ふとわたしはなぜ彼を好きになったのかを考えていた。
彼は、とても優しい人だった。彼は、わたしの笑顔が好きだと言ってくれた。彼との思い出を思い出し、涙が溢れた。
泣き虫なわたしをいつも横で支えてくれていた彼は、もういない。あまりにもお互いが幼すぎたのだろうけど、今ならはっきりと言える。好きになることができて、気持ちを伝えられてよかったと。
「大好きだったよ」。気持ちを素直に伝える事が出来ないこともある。しかし、恋をすることは、誰にだって起こり得る。どんな国のどんな人でも、恋をすることはある。どうか、その恋をどんな形であれ、大切に温めていてほしい。
そして、それがいつか実を結ぶ日を望んで。