都会でも田舎でもない郊外で生まれた私は、ぱっとしない見た目ともっさりした体型から義務教育期間にかけて、長きにわたって苛められていた。悔しくて悔しくて、いつか皆を見返してやろうと思って、その分一生懸命に勉強に集中していた。

そして功を奏して、私は晴れて都会の進学校に合格することになった。「ざまあみろ、私はあんたたちとは違って、優秀な人間なんだ。これからは他人よりも何倍も輝かしいエリート街道を突き進んでいくんだ」と心の中で、そんな闇を鋭く吐き捨てながら、私は高校生になった。

キラキラな充実した「高校生活」を送るために頑張ったけど…

高校生になって、私は衝撃を受けた。まず、入学式で白いハイソックスを履いているのは私しかいない。他の女子は黒か紺のハイソックスを履いていた。髪も後ろに無造作にひとつにしばったまんま、スカートも膝下を覆いかぶさった状態の私は高校デビューというものを知らなかった。「ヤバい、完全に私、出遅れた...」

その後、私が都会っ子になるまで他の子を真似しようとしたが、体型のコンプレックスで思い描いていたのとなんか違う、どことなくあか抜けない女子高生としてスタートを切った。

「よし、外見でイケてる女子になれないなら、実力でのしあがっていこう」と考えた私は、勉学により一層励むのはもちろん、部活、学級委員長、学祭実行委員、修学旅行委員とイベントに精力的に打ち込んだ。義務教育期間とはちがった、キラキラな充実した高校生活を送るために。

しかし、事は上手く運ばなかった。高校2年から理数系で赤点を取るようになり、勇み足ばかりのぱっとしない存在として、皆が煙たがられるようになっていった。当時はそんなことは気づかず、赤点も理数系に留まっていたため、挽回のチャンスはまだあると楽観的に捉えていた。でも、努力しても結局空回りするばかりで、何事も裏目に出てしまうことをなるべく気にしないでいた。

プレッシャーに押し潰されそうになりながら、私は「必死」だった

そんな私が挫折を経験したのは、高校最後の秋のことだった。この頃には、国公立大学合格というプレッシャーに押し潰されそうになりながら、エリート街道というレールを走るのに必死で理数系のみならず得意科目まで赤点を取るようになっていき、友達グループも『余り物グループ』に属する、言わば劣等生に成り果てていた。

あの頃は、ちょうど2学期最後の期末試験のことだった。
「ガハハハハハハハハハ!!!!!」と突然、爆音でおびただしい数の嘲笑が私の脳内に響いた。私は恐怖を超越して、天井を見上げ無音で高らかに笑った。なるほど、そうきたか。私を踏みにじるような声は、皆になすりつけられて、敬遠されてできた、シミのようにこびりついた私自身だったんだ。幼少期の心的ダメージそのものが、今まで癒えることもせず泣き叫んでいたんだ。そう気づいたのは、まだずっと先のことだけれど。

私は深刻な精神障害と診断され、国公立大学進学どころか卒業さえ危ぶまれた。頻繁に保健室に通い、同じく私と同じような理由で保健室に来るようになった高校生になったばかりの男の子に、仲間だと思って楽しく話しかけたら「あんた、『バカ』なんですか?」と侮蔑された。

でも、私は傷つかなかった。この状況に傷ついている余裕なんかなかった。まず高校を卒業して、大学に行かなければ。国公立でも有名私立なんかじゃなくてもいい。生きるため、安定した人生を手に入れるため、なにがなんでも大学に行かなければ。私はそれでもエリート街道のレールにしがみついていた。

エリート街道に憧れて、突き進んで、幻滅した後に気づいたこと

「でも私、なんで大学に入りたいんだろ」地下鉄のホームで帰りの電車を待っていた私は、なぜか無性に涙がポロポロと零れていた。エリート街道という幻想に幻滅しながらも、エリート街道という希望にしがみつく自分の姿に自分で情けなくなってしまった。

そのとき、ハッとした。私が、鬱々とした人生を切り開いた理由を。

私は、勉強が好きだ。勉強の楽しさが私の友達だった。世界を知り、文学の優美さに触れ、いにしえの知識から教訓を学ぶことが宝物になるということがどれほど素晴らしいことなのか、もっと早く気づくべきだった。ここから私は、国公立や偏差値に関係なく大学を選ぼうと決めた。

ここから私がどうなったかというと、Fラン大学に行ったかとなればこれまた面白いとは思うが、残念ながら、普通の私立大学に決まった。とはいうものの、普通の大学でも、私にとっては素晴らしい講義をしてくれる教授ばかりで、心から私のことを親しんでくれる心の友もゲットできた。

エリート街道に憧れて、突き進んで、幻滅した後に気づいたこと、それは“偏見は偏見しか生み出さない”ということだ。世の中には私以外にも偏見に虐げられ、あらゆるかたちで脱落した人はごまんといる。大切なことは、その偏見にいち早く気づき、自分から別離することだ。

これからキャリアを積み上げる若者にむけて、エリート街道やキラキラ女子といった、幻想を求めるのではなく、偏見にとらわれない私だけの選択を大切にしてほしいと思う。どんなにハンディキャップがあったとしても、光は誰にでも差すから。

これから大学受験を受ける君へ、エリート街道を外れても素敵なキャンパスライフを送ることができた新社会人より。