いつか私が取り組みたいのは「日本文化の美しさを発信すること」。
着物や工芸品の繊細さ、舞の優美さ、力強さ。日本文化の美しさに魅せられた一人として、皆さんにも良さを伝えたい。まだ実現できていないながらも、そんな夢を見据えて、私は日々に向き合っています。
大学の講義で初めて体験した日本舞踊が楽しく、いつの間にか夢中に
そう思うようになったきっかけは、2017年、私が大学2年生のころにあります。大学の講義の中で、日本舞踊を体験できる機会がありました。それまで日本舞踊には全く触れたことがなく、ただ漠然と、「着物を着て踊るって優雅でいいなあ。あんな風にきれいな姿になりたいなあ」という憧れがあっただけでした。
講義は大学構内にある和室で行われ、実際に日本舞踊家として活動している先生が教えてくださいました。先生は石川県の出身であったため、石川県の伝統的な踊りや、お祭りの盆踊りなどを教わることができました。私にとっては全てが初体験だったので、見よう見まねで始めたのですが、実際に着物を着て帯を締め、扇を手にして踊ってみると、今までになく身が引き締まり、いつの間にか夢中になっていく自分に気がつきました。
背筋を伸ばし、一つ一つの動作に心をこめて、指先まで美しく。
今までにない体験が楽しかっただけではなく、踊っている時の自分の振る舞いが美しいようにも感じられました。そこにはずっとなりたかった自分がいるような気がして、だんだんと自信にも繋がっていきました。
週1回ペースで3ヶ月程度続いた講義も終わりに近づいたころ、講義内で参加者による発表会を行いました。発表会が終わるころ、先生が「あなたの踊りは、ちゃんと“しな”があって、一番よかった」とおっしゃってくださいました。私自身も踊りに対して少し自信がついてきていたのもあって、その言葉はとても嬉しく、「私、もしかすると日本舞踊に向いているのかも」と思うきっかけになりました。
日本舞踊の経験から、日本文化の美しさを発信したいと考えるように
講義が終わってからも、時折先生の関わっているイベントなどに誘ってもらい、参加を続けてきました。中でも2019年夏、ある大きな神社のお祭りにて、中心の櫓の上で盆踊りをした経験は思い出に残っています。
暑い夏の夜、熱気に包まれ盛り上がっているその中心で、ただただ楽しく踊りに熱中した瞬間。櫓の上から見えるのは、神社の本殿、夜の闇を鮮やかに彩る赤い提灯の数々、そして歓声をあげて踊る何百という人々。祭りの高揚感もあってか、うねるようなエネルギーの中、楽しさに身を任せて踊ったのを覚えています。私は、それほどの熱気の中で堂々と自分を表現できることがとても心地よく、心からその空間が好きだと感じることができました。
また、一緒に盆踊りに参加した方々の中には、普段から着物を身に纏って舞台に立っているダンサーもいました。彼らの美しくかっこいい立居振る舞いに間近で触れ、彼らと同じ時間を共有することで、新しい世界を垣間見たような気がして、これもまた刺激になりました。
こうした経験から、私は着物を着てパフォーマンスを通して多くの人に見てもらうこと、さらに言えば日本文化の美しさを発信していくことに憧れを持つようになりました。そして、日本舞踊の講義で抱いた「私、向いているかもしれない」というほんの少しの自信が、その憧れを、「私だからできることなのではないか」という思いに変えてくれました。私だからできる価値づくりに取り組んでいきたい。だんだんとそんな思いが私の中で強まっていきました。
いろんな経験や出会いを掛け合わせて、やりたいことを実現したい
と、ここまで華やかな記憶をたどってきたのですが、現在の私はこの経験とは一見かけ離れた、福祉業界で仕事をしています。しかし、せっかく心から憧れたものがあるのに、諦めるにはもったいない。実現の形は変わるのかもしれませんが、いつか「日本文化の美しさを発信する」という夢を叶えていきたいと思っています。
着物や伝統工芸品などをメディアを通じて発信するのか、気軽に日本文化を体験できるような仕組みづくりをするのか、はたまた今の会社の事業と何らかの方法で掛け合わせるのか。
方法は定かではないですが、これからいろんな経験をして、いろんな人と出会っていく中で、やりたいことの実現へと向かっていけたらと思います。
今回このエッセイを「かがみよかがみ」へ投稿したのは、外に向けて自分のやりたいことを発信した、という点で、私にとって夢を叶える第一歩なのかもしれません。外へ発信を続けていく、など一つの小さな行動も、きっと何かヒントを与えてくれる。今は目の前のことに必死になりがちな毎日ですが、小さな行動を積み重ねることで、やりたいことを実現する方法を模索していきたいです。