二股されていた。それを知ったのは、彼と別れてから約3ヶ月後のことだった。
2020年5月。緊急事態宣言がようやく終わりを迎えようとしていたころ。大好きだった彼との別れは突然だった。
以前「恋愛に依存してたメンヘラな私が、彼と別れて気づいたこと」というタイトルでエッセイを投稿した。別れてすぐに執筆したもので、何も事実を知らず、傷ついたばかりの中もがいている私の心情が述べられているので合わせて見てほしい。

友人から告げられた、彼の二股。私は不思議と冷静だった

さて話を戻そう。なぜ私が二股をされていたという事実を知ることになったのか。
彼にズブズブだった私がすぐにふっきれることもなく、別れてから毎日のように彼を思い出しては涙を流していた。ここだけ見ればただの未練なのだが、自分を変えたいという気持ちも併せ持っていて、別れの原因や自分ととことん向き合おうともしていた。

私には彼を通じて知り合った友人がおり、彼と別れてからもその人は仲良くしてくれた。あるとき一緒に飲みに行き、その際なにげなく、「彼、忘れられない人と付き合ったでしょ」と尋ねてみた。すると、友人は少し言葉を濁しながら「実はその人とずっと付き合ってたんだよね、つまりは二股」と告白した。一瞬動揺したが、私は不思議と冷静だった。

ふと気になって二股と浮気の違いを調べてみた。浮気は本命がいるけれど気持ちの揺らぎから他の人に手を出してしまうこと、つまりは浮気相手は下心でしかない。一方二股は、本命がいるにも関わらず、なにかのきっかけで違う人を好きになってしまい同時に付き合うこと、つまりはどちらも本命なのだ。

私が受け取っていた愛は、初めて感じた無償の愛だった

二股という事実を知って約5ヶ月後の現在。だいぶ彼への気持ちは落ち着き、毎日のように考えていたのが嘘のように、今ではたまに思い出して懐かしむ程度となった。
それでも彼に直接問いたい思いがある。
ほんとうの別れの理由、ほんとう彼の気持ち。
彼が別れを決意したとき、1番に愛していた人はどちらだったのか。
ほんとうに今の彼女のことが好きでそちらを選んだのか。
この別れは、彼の本望だったのか。

彼との日々、彼がくれた言葉は二股されていたという事実をベースに見ると、「全部嘘だったんだ」「最低な男だ別れて正解!」なんて声が聞こえてくる。
しかし私が彼から受け取った感情を併せて見ると、その声に違和感が生じるのだ。彼はどんなときも私の味方でいてくれた。そして母のように何があっても私を受け止めてくれた。私が受け取っていた愛は、これまでまともな恋愛をしたことがなかった私が初めて感じた無償の愛だった。
だから私は色々気づかされて変わろうと思えたし、そんな自分にしてくれた彼に対して感謝の気持ちが芽生えてくるのだ。

現実を知るべきだったのか否か

全てが嘘だったとして、そんなペラッペラな日々にそこまでの気持ちを抱くだろうか? そこまでの思いを受け取るだろうか? 私もそこまで頭の中お花畑ではない。
友人が語るには、今の彼女は私よりひどいメンヘラらしく、彼はずっと別れると口にしていたらしい。そんなメンヘラ彼女なのでリサーチ能力に優れており、彼の二股に気づいて私と別れるように言ったらしい。

ふった理由、ふられた理由は当事者にしかわからない。それによって、自分が信じていた世界が変わってしまうかもしれない。「今までで1番の男」だったのが「今までの男と変わらない」という事実になった。それが現実だった。
現実を知るべきだったのか否か。未だにその答えは分からないが、それを正解にするのは自分次第。

彼にいつかまた出会えたならば、その時に笑ってこのことを話せるように。この別れがあったからこそ今の私がいると胸張って言えるように。