高校生の頃、とにかく早く家に帰りたいと思って学校生活を送っていた。それは家が大好き!という思考からくるものではなく、ただ単に学校という場所が居心地悪かったのだ。
それでもなんとか三年間やり過ごすことが出来たのは、有り難いことにそんな私にも構ってくれる友人がいたことだ。しかし、ある友人に対して申し訳なかったと思う自身の行動がある。ただの自己満足に過ぎないが、なんだかんだ仲良くしてくれたCさんに謝りたいことがあります。
とにかく早く帰りたい私。人と話すのが大好きな彼女
冒頭にもあるように高校生の頃、とにかく学校という場所に1秒たりとも長く居たくなかった。放課後友達との談笑の時間が煩わしく感じた。話しながら昇降口まで進むなどなら出来るのだが、教室や廊下に溜まって時間を気にしないで話すことが嫌だった。その気持ちは進級しても変わることはなかったが、不満な気持ちを隠すという術を身につけたため、表面上は放課後のおしゃべりを楽しむ女子高生になりきれていたと思う。
しかし一年生の頃の自分は違った。とにかく早く帰宅することに拘っていた。また私は運動部に所属しており、一週間の中で唯一部活動が休みの月曜日は特に早く帰ることへの意識が高まっていた。
Cさんについて説明させて頂く。唯一出身中学が一緒であったCさんは、社交的で人当たりが良いため友達が沢山いた。そして人と話すことが好きな人だった。
入学したての頃は同じ部活動に所属し、帰る方面も同じだったため、毎日彼女と一緒に帰っていた。部活が休みの月曜日、彼女と一緒に下駄箱に向かう時は心の準備が必要であった。彼女らの邪魔をせず、風景の一部になるという覚悟が。
おしゃべりに付き合わないために、私は先に駐輪場で待つことにした
Cさんは駐輪場までの動線の途中、友達がいたら輪に加わり、解散して少し歩くとまた違う輪に加わりを繰り返してやっと校門を出る。この一連の流れがとにかく私は疲れた。
先に帰ろうとしたり輪の外で待ったりすると感じが悪いし、出しゃばるのも良くないなどと気にして、みんなが笑ったタイミングで口角を上げたり、驚いた表情をしたりして無理矢理馴染もうとした。そんな私にCさんはお構いなしのようだったが、他の人たちは私を邪魔に感じただろう。異物が混じっていたら込み入った話など出来るはずもない。
そう気づいた私は、Cさんとホームルームが終わるタイミングが合わない限り先に駐輪場に向かい、待つことにした。その方が私も彼女と話す人達たちも気疲れすることはないと思っての行動だった。
しかし別の問題が生まれた。駐輪場まではとてもスムーズに向かえるのだが(一人だから)駐輪場でものすごく待つことになった。平均15分、長い日は約30分。そりゃそうだ。これまでは彼女と共に練り歩き様々な人のお喋りを聞いていたのが、一人で待つ時間に変わっただけなのだから。
私はせっかちなので待つことが苦手だ。それに加えて早く家に帰りたいという確固たる思いを持っていたため、このスタイルになって半月経ったある日、待つことが馬鹿馬鹿しく感じた。
「先に帰るね」。この五文字が送信できず、カエルのスタンプに頼る日々
待つことが馬鹿馬鹿しく感じた私は、11分待ったら先に帰るという自分ルールを定めそれに則り行動することにした。なぜ11分なのかというと当時私の待てる限界の10分に1分おまけしての11分。
しかし「先に帰るね」、この五文字が中々送信できなかった。相手に嫌な思いをさせてないか、感じが悪くないかなどと思い悩んでしまうのだ。そこで私は先に帰るねという趣旨のメッセージが入っているスタンプを探しまくり、カエルのキャラクターが「帰るね!」「先に帰ります」などと言っているスタンプに力を貸してもらうことにした。スタンプの方が軽い印象を与えるし、自身のダメージも少ないと思いこのスタンプを購入した。
それからは駐輪場に到着すると携帯をいじって11分経つのを待ち、カエルのスタンプを押して速やかに自転車に跨る日々が続いた。私という人間はつくづく生きるのが下手くそだと実感する。
Cさんへ
私は冷たい人間です。あなたが大好きな友人達とのお喋りの時間は私にとっては退屈な時間でした。あなたとの帰り道よりも一人で自転車のペダルを踏む方を選びました。先に帰ってしまいごめんなさい。そしてカエルのスタンプで連絡を済ませてしまいごめんなさい。
でもね、少し言わせてください。駐輪場で待ってる私のことを考えたことはありましたか? 私は短気で優しくないので、あなたが友達との談笑を満足し終えるまで待つことは出来ませんでした。
ただ私が合わなかっただけで、あなたとのお喋りが大切な方もいます。これからもお喋り好きのあなたでいてください。そして気が向いた時に私ともお話ししてくれると嬉しいです。