「年配の方は大事にすべきだ」

昔から言われていることだ。でもこれ、知識も経験も豊富で貴重な助言をくれる高齢の方に対して若い人側が言う言葉だ。年を召した人が自分から言うのは、年功序列社会の名残のような、年が上なだけで絶対的に偉いと勘違いしているように見えなくもない。自分からそう言ってふんぞり返っているような人は、言葉は悪いが老害だと思う。

「年寄りは大事にせなあかんやろ」。社長の真意は?

この一言を、私は取引先の社長から嫌味のように言われた。

入社して半年。新しく担当を持ちますと挨拶に行き、一度だけお会いしたその社長。私が新人だということはわかっている。普段やりとりすることはめったにないのだが、先日書類の依頼があり社長から直々に依頼をいただいた。

そこで送った書類に不備があった。具体的に言うと「商品のリニューアルに伴い、どこが変更になったのか教えてほしい」というものだった。そこで先方は違いが一目でわかる資料が欲しかったようなのだ。

弊社にはその「一目でわかる資料」はない。そこで新商品の資料だけを送ったところ、書類の文字も小さく何が違うのか全くわからないと。それで「年寄りは大事にせなあかんやろ」と言ってきたのだ。

しつこいがこちらは新人だ。その一言でこちらとして何がいけなかったのかわかるはずもなかった。その後もねちねちと嫌味を言われ、結局何をすればよいのかわかりかねて「これまで商品のリニューアルがあった際にはこのような対応をさせていただいているのですが……」と言うと「じゃあそうして」と言われ、一方的に通話を切られた。

年上の方の発言だからといって、なんでも真に受ける必要はないと学んだ

こちらに非があったのは重々承知だが、なにもわからない新人に嫌味で依頼をぶつけてくるその底意地の悪さ。そんな態度をとっておきながら自分のことを大事にしろだなどと、そんな年配者は尊敬するどころか心底「老害だ」と思ってしまった。

「追加でこの資料を送ってくれ」。普通にそういう言い方をしてくれれば、こちらも何をすればよいのか明確だし、素直に反省しようという気持ちも湧いてくる。それなのに、なぜそれができないのか。私よりもはるかに人生経験を積んできているはずなのに。

年齢に関係ないが、そういう言い方しかできないの? という人は一定数いる。社会に出ればそんなことは日常茶飯事だと思うのだが、だからといって無心でかわせるほど図太くはなれていない。

こういう風に言ってくる人は私が若いから、新人だから、はたまた女だから、見下しているのだろうか。なめているのだろうか。どういう意図なのかは想像でしかないが、わざわざそんな言い方をしてくるなんてそういうことなのかと思ってしまう。私の上司が同じことをしたとしてそんな風にはきっと言わないであろう。

将来は「年寄りを大事にしろ」でなく、「自分より年をとっているからといって人間的に優れているとは限らない。むしろ偉そうにしている人はその程度なのだから、あまり真に受けないように」と心から言えるおばあちゃんになりたい。

そんな思いを抱えながら、「嫌味でしか言いたいことを言えないなんてかわいそうな人」「きっと私と違って嫌なことがたくさんあってイライラしてるんだろう、お疲れ様だな」と思って気持ちを立て直し、再びパソコンに向かっている。